2019 Fiscal Year Annual Research Report
高分子の合成と物性技術の連携による分子量分布の物性に対する本質的役割の解明
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19J01025
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木田 拓充 広島大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 分子量分布 / 結晶性高分子 / ひずみ硬化 / タイ分子 / シングルサイト触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は予定通りエチレンのリビング重合が可能なフェノキシイミン触媒の合成を行い、単分散ポリエチレン(PE)の合成を達成した。特に、フェノキシイミン触媒の配位子構造を適切に選択することで重合速度が異なる触媒を合成することができ、分子量分布因子が1.1程度と低い値を保ったまま重量平均分子量を5万から60万と幅広く変化させることに成功した。本年度は、特に重量平均分子量が20万以上の単分散PEを用いて、重量平均分子量が15万、分子量分布が6.0程度の広い分子量分布を有するPEに対してさまざまな分率でブレンドすることにより、高分子量成分の分率を変化させ、高分子量成分が構造形成と物性に与える影響を評価した。ブレンド試料はいずれも結晶度や結晶厚がほぼ一致しており、結晶構造の形成には高分子量成分の分率はあまり影響せず、平均分子量が支配的であることがわかった。また、応力-ひずみ曲線は、弾性領域、降伏領域およびネック伝搬領域までは分子量分布の形状に依存せずほぼ一致した。一方でひずみ硬化領域は分子量分布の依存性が強く、より高分子量の成分を多く含む試料ほど応力-ひずみ曲線の傾きであるひずみ硬化係数が増加した。これは、高分子量成分が増加したことで結晶間を繋ぐタイ分子が増加し、結晶間の応力伝播が促進されたと考えられる。実際に、各試料のタイ分子率を算出した結果、特に複数枚のラメラ晶を繋ぐタイ分子率とひずみ硬化係数には良い線形性が確認でき、このような複数枚のラメラ晶を繋ぐタイ分子が増加することで強固なネットワーク構造が形成され、ひずみ硬化性が向上することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りフェノキシイミン触媒の合成に成功し、分子量が異なる単分散ポリエチレンの合成条件を確立した。また、すでに単分散ポリエチレンをブレンドすることで分子量分布の形状が異なる試料の調製および物性評価に着手しており、予定通りに研究が進行している。また、本研究の内容は国内学会にて4件、国際学会にて1件の発表を行っている。これらの状況から、当初の予定通り順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は分子量分布の形状が二峰性および多峰性のポリエチレン試料を調製し、結晶化挙動および引張挙動の評価を行い、分子量分布の形状と物性の関係解明を行う予定である。特に、二峰性の分子量分布を有するポリエチレンの力学物性評価に注力し、各分子量成分が構造形成および力学物性に与える影響の解明に挑む。
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Research Products
(11 results)