2020 Fiscal Year Annual Research Report
Memory Politics and Victimhood Nationalism in the Socialist Yugoslavia
Project/Area Number |
19J01045
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
門間 卓也 関西学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 犠牲者ナショナリズム / 社会主義 / ユーゴスラヴィア / クロアチア / 記憶の政治 / 第二次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルスの世界的蔓延を受けて現地調査が不可能となったため、今年度(2020年度)は研究計画を一部変更した。まず研究対象である社会主義ユーゴスラヴィア期の「犠牲者ナショナリズム」についてより広い視野から検討するために、その前史にあたる戦間期および第二次大戦期のユーゴスラヴィアにおけるナショナリズムあるいはファシズムの展開について重点的に調査を進めた。その目的は、社会主義期に国内外で活動しながらクロアチア民族運動に一定の影響を与えた知識人やウスタシャの残党の思想的背景を把握することにあった。あわせて「ファシズム」が運動あるいは思想として戦間期にはヨーロッパ以外の地域にも広く受容されたグローバルな現象であることを鑑みて、その実態調査にも取り組んだ。特に大戦期に枢軸国の占領下に置かれた東欧諸国と中国諸地域の現地社会について比較検討する作業を進めている。その成果を基に、ユーゴスラヴィアで独自の「犠牲者性」概念が構築される歴史的環境について、国際比較の下で確認することが出来た。 また社会主義ユーゴにおける「記憶の政治」の展開を追うにあたっては追悼祈念碑建立事業について調査を進めている。特にその計画及び実施に積極的に関与した退役軍人団体の活動に注目しながら、「犠牲者ナショナリズム」を巡る「下から」の運動がいかに当時の国是としての社会主義イデオロギーと共鳴していたか、あるいは差異を孕むものであったか分析を進めている。 さらにユーゴスラヴィア研究に関する学術的議論の場を構築するための準備として、他の若手研究者と共に研究会を設立した。その活動を通じて得られた最新の研究情報や各種データ(現地における「記憶の政治」の動向など)は、現在構築中のホームページで随時報告する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度末より現地調査が困難な状況にあるため、研究課題に即した学術論文の執筆に必要な史資料の収集が滞っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現地調査が可能になるまでは、入手可能な史料や二次文献を基に研究成果の論文化を進める。またユーゴ地域における戦間期からのナショナリズムの急進化や「犠牲者ナショナリズム」のグローバルな展開といった、研究課題と関連する歴史的文脈を正確に把握するための作業も並行的に行いながら、研究内容の深化に努めたい。 また2020年度に採用を一時的に中断したため、2022年度まで採用期間を延長する予定である。
|