2019 Fiscal Year Annual Research Report
未就学児における文字認識の解明と読み困難に対する早期支援システムの社会実装
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19J01121
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
奥村 安寿子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 知的・発達障害研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 未就学児 / 文字認識 / 見本合わせ |
Outline of Annual Research Achievements |
未就学児の文字認識を評価できる行動課題を作成するため,ひらがな単語と音および絵(意味)の連合について見本合わせ課題を用いて調査し,音読できるひらがなの文字数との対応を検討した。課題では,未就学児にとって親密性の高い4文字のひらがな単語(16語)について,絵と2つの選択肢を提示した。選択肢は正しく書かれたひらがな単語と,次のいずれかの誤りを含む表記となっていた(①回転,②置換,③入れ替え,④濁点脱落)。それぞれの誤りは,4問ずつ提示された。実施手続きは,最初に絵の名称を尋ね,答えられなかった場合は調査者が回答を提示した。次に,「○○[単語]を字で書いたときに,正しいのはどちらだと思うか」と尋ね,2肢強制選択法で回答を求めた。回答は,誤りの種類ごとに正答数を集計した。音読できるひらがなの文字数については,清音45文字をランダム順に並べた表(5行×9列)を提示し,縦方向に読んでいくよう求め,正しく読めた文字数(自己修正含む)を集計した。 進捗として今年度は,幼稚園・保育園(計11園)において年中児(4-5歳)および年長児(5-6歳),計261名を対象としてデータ収集を行った。詳細な結果は現在解析中であるが,ひらがなを音読できる以前の未就学児においては,文字の回転(①)については多くが正誤を判別できるが,文字自体の弁別を求められる(②~④)については判別が難しい傾向が示唆されている。これらより,未就学児における文字認識について,文字の向きといった物理的な特徴については読めるようになる以前から獲得が進んでいるが,「何の文字であるか」という弁別や同定については,必ずしも音や意味との結びつきが先行せず,個々の文字を読めるようになることで獲得される可能性が示唆された。 得られたデータの解析は現在進行中であり,次年度以降の成果発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未就学児の文字認識を評価する行動課題について,集団調査によるデータ収集が進み,本研究の最終目的である支援介入についても,研究協力園と実施の合意まで到達したことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)文字認識に関する行動指標の作成:今年度実施した行動課題の結果について,4種類の誤答パターンの成績分布,および読めるひらがな文字数との対応から,未就学期の文字認識がリスクレベルにあると考えられる判定基準を作成する。 2)文字認識に関する神経(事象関連電位)指標の作成:未就学期の文字認識を反映する神経指標を開発するため,文字に対して特異的に増大することが知られている事象関連電位成分N170,および文字と音の連合獲得を反映するミスマッチ陰性電位の測定および発達的変化の検討を行う。 3)文字認識とひらがな習得を促す介入:今年度の結果から,文字認識とひらがな習得は全ての未就学児について保証すべき発達項目であると考えられたことから,研究協力園において担任教諭による一斉指導形式の介入を開発・実施する。指導の実施については,追跡調査を実施している園から了承を得ており,2020年度の前半から実施できる見込みである。その介入効果を検証し,文字認識やひらがな習得を向上させる効果が確認できたら,他地域の研究協力園においても実装を進めることを計画している。
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