2019 Fiscal Year Annual Research Report
現代イスラーム世界の分断と統合:グローバル法学による合意形成と宗派対立の克服
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19J01133
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
池端 蕗子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 国際規範形成 / ウラマー・ネットワーク / 宗教と国際関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度前期は、イスラーム法学者たち(ウラマー)のグループが現代における諸問題についてどのような方法で、どのような内容のコンセンサス形成を行っているのかについて、先行研究の収集と分析を行った。 現代における諸問題について、具体的な事例から検討を行った。まず、イスラーム経済の分野において、イスラーム法学者らのグループによる合意形成について分析し、9月に開催された国際ワークショップにおいて発表した。生殖医療などの新しい医療技術の発展に対応するための生命倫理とイスラームの規範についても、ウラマーがどのような合意形成を行っているのかについて分析を行った。その内容については、10月にマレーシアで開催された国際会議において発表した。 マレーシア滞在中には、関連書籍の収集とフィールドワークも行った。クアラルンプールに事務所を構えるイスラーム協力機構のビジネス部門支部に訪問し、聞き取り調査を行った。国際的な貿易振興イベントの開催やビジネスマンの交流を促進し、ビジネス分野でのネットワーク形成を行うことが本組織の職務である。サウディアラビアに本部があるイスラーム協力機構とこのクアラルンプール支部との関わりについて、職員にインタビューを行った。 1月から2月にかけては、ヨルダンの首都アンマンでフィールドワークを行った。大学や書店、ヨルダン国立図書館、ヨルダン大学図書館、アメリカ東洋研究センターにおいて、イスラーム法学、法源学、法学教育、イスラーム法の法源ともなるイジュマー(コンセンサス)、集団的イジュティハード(ウラマー集団による法の導出)等に関する資料収集を行った。 本年度は博士論文の書籍化に向けて原稿の加筆修正を行ったほか、学術書の共同執筆者として、イスラーム諸国とウラマーによる合意形成についての執筆に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際会議や国内学会では、積極的に研究成果の公表を行うことができた。現代イスラーム世界における集団的法学意見形成という未開拓な分野において、異なる事例を扱い計4回の口頭発表を行ったほか、博士論文の内容をアップデートした単著の刊行に向けての準備を進めることができた。 現地調査としては、研究対象としているイスラーム法学の現代的な営為に関して、マレーシアおよびヨルダンにおいて資料収集活動を実施し、一次資料および二次資料となる文献を収集することができた。特にヨルダンでは、イスラーム法学教育の現場である大学において聞き取り調査と資料収集を行い、有用なデータを収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
イスラーム世界の「合意」のあり方について、その概念・定義をイスラーム法学の立場から精査する必要がある。来年度は、イスラーム世界において学者間の合意、共同体全体の合意がどのように捉えられてきたかについて、一次資料の収集をさらに行うとともに、その読解を進める。分析結果については、国内外の学会等で積極的な成果公開に努める。
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Research Products
(4 results)