2019 Fiscal Year Annual Research Report
自由エネルギー反応経路探索法によるタンパク質リガンド結合の計算手法開発
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19J01221
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
満田 祐樹 筑波大学, 計算科学研究センター, 特別研究員(PD) (70866251)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 計算化学 / 分子動力学計算 / 自由エネルギー計算 / 生体分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、より高次元の自由エネルギー地形計算が可能となるように計算手法の改善、解析手法の開発を行った。まず、解析手法として、「有効流量法」を開発した。この方法では、得られた反応経路ネットワークから反応速度を算出し、それを元に時間発展シミュレーションを行う手法である。このシミュレーションから反応の主要経路を発見することができる。実際にアラニンオクタペプチドに対してこの手法を適用し、重要な経路を割り出すことに成功した。この研究成果について、学会発表を行い学会誌へ寄稿した。 さらに、計算手法自体の改善として、いままで自由エネルギー地形計算をアンブレラサンプリング法に限っていたところを、一般的な自由エネルギー地形計算に適用できるよう計算プログラムを改良した。これによって、メタダイナミクス法などの低コストな手法でも反応経路探索法の適用が可能となり、自由エネルギー反応経路ネットワークの算出が可能となった。さらに、メタダイナミクス法の計算結果から、各反応経路の反応速度を割り出すことができるため、それを元に反応経路ネットワークを定常状態近似で縮約し、フォールディング構造を安定点の集合として捉えることで、構造揺らぎを含めたエントロピー評価が可能となった。この研究成果について、学会発表を行った。また、著名な国際雑誌に投稿中であり、来年度中の発表を目指している。 新しく開発した手法はメインテーマであるタンパク質リガンドドッキング計算に有効であり、来年度での実用を可能とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によって、今までアンブレラサンプリング法のみに対応していた高次元の自由エネルギー地形計算について、プログラムを一般化して、様々な計算手法に対応した。これによって、メタダイナミクス法を利用した計算が可能となった。メタダイナミクス法はアンブレラサンプリング法よりも計算精度は劣るが、計算にかかるコストが小さい。これによって、より低い計算コストによってシミュレーションが可能となった。これらのことから、当初の予定であった「タンパク質リガンドドッキング計算へ対応するための高次元計算」を可能とした。次年度の推進方策である、結合ポーズ再現性の比較に向けて、順調に研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、X線構造解析の結果と自由エネルギー反応経路探索法で探索した安定構造の計算 結果とを比較し、我々の手法を用いた場合の、結合ポーズ再現性を比較する。結合ポーズを計算する際に重要となるのは、リガンドの構造、タンパク質とリガンドの相互作用である。これらについて、新しく考えたEnhanced sampling法と超球面探索法を組み合わせた反応経路探索法によって、結合ポーズを探索する。X線構造解析の結果を持つタンパク質―リガンド結合の構造として、まずはp38α map kinaseの阻害剤のX線構造について計算を行うことを計画している。その他、必要に応じて系の種類を増やす。またタンパク質―リガンド結合の計算に適したEnhanced sampling法が何であるかも同時に調べ、研究手法をさらに発展させる。開発した自動計算システムを元に様々な計算系を選択し、実際の結合自由エネルギー計算を行う。
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Research Products
(6 results)