2019 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノ粒子触媒の活性サイトの集積化:酸化物クラスター含有錯体の前駆体応用
Project/Area Number |
19J01232
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 峻 首都大学東京, 大学院都市環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 触媒 / 酸化物クラスター / ルテニウム / C-N結合形成反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属-酸化物界面は、その特異的な構造から触媒の活性サイトとして重要な役割を果たす。酸化物クラスターの表面酸素原子が金属イオンに配位した酸化物クラスター含有錯体は、分子レベルで金属-酸化物界面を有することから、高密度な金属-酸化物界面を有する担持ナノ粒子触媒の前駆体として有望である。アルコールをアルキル化剤とするアミンのN-アルキル化反応は、水のみを副生するC-N結合形成反応であり、これまでにRuをはじめとする種々の固体触媒が報告されている。そこで本研究では、Ru-V系複合クラスターの前駆体応用によるRu触媒の高活性化を試みた。 V酸化物クラスター含有Ru錯体[Ru4(C10H14)4V6O19]を前駆体とし、Ru-V触媒を調製した。この触媒は、共含浸法により調製したRu-V触媒と比べてアミンのアルコールによるN-アルキル化反応において高い活性を示し、触媒回転頻度(TOF)は10倍以上となった。 HAADF-STEM測定およびEDS分析によると、酸化物クラスター含有錯体を前駆体とすることで、RuおよびVの両成分を含むナノ粒子が効率よく形成されていた。触媒反応におけるRu-V酸化物界面の役割は、中間体イミンの水素化に有効な極性の高い水素種が、アルコールの脱水素によって生成することにあると考えている。このように、酸化物クラスター含有錯体を前駆体としてRu-V触媒を調製することで、アミンのN-アルキル化反応に有効なRu-V酸化物界面を高密度化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
V酸化物クラスター含有Ru錯体[Ru4(C10H14)4V6O19]を前駆体としたRu-V触媒が、共含浸法により調製したRu-V触媒に比べてアミンのアルコールによるN-アルキル化反応において高い活性を示すことを見出した。HAADF-STEM測定およびEDS分析から、共含浸法ではRuとVの二成分が独立にナノ粒子を形成するのに対し、酸化物クラスター含有錯体を前駆体とすることで、両成分を含むナノ粒子が効率よく形成されていた。これは、酸化物クラスター含有錯体を前駆体とすることで、金属-酸化物界面が高密度化することを示している。このように、本年度はV酸化物クラスター含有Ru錯体の前駆体応用により、高密度なRu-V酸化物界面が形成され、Ru-V触媒の活性が向上することを見出した。従って、計画に沿っておおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に見出したRu-V触媒について、高分解能TEM測定およびX線吸収微細構造解析によりRu-V酸化物界面の局所構造を解明する。反応速度解析から、Ru-V酸化物界面が反応において果たす役割を明らかにする。種々の酸化物クラスター含有Ru錯体の前駆体応用に取り組み、酸化物クラスターの構成元素を最適化する。
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