2019 Fiscal Year Annual Research Report
共形場理論と量子タイヒミュラー理論を通した共形ループ集団の研究
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19J01279
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
越田 真史 中央大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ガウス自由場 / シュラム・レヴナー発展 / マクドナルド過程 / 共形場理論 / Virasoro代数 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) ガウス自由場とシュラム・レヴナー発展の関係: ガウス自由場(Gaussian free field, GFF)とは2次元単連結領域に定義されたランダムな超関数である。一方シュラム・レヴナー発展(Schramm--Loewner evolution , SLE)とは2次元単連結領域中のランダムな曲線であって両端が境界上にあるものを確率過程によって記述したものである。先行研究によってSLEとGFFの間には密接な関係があることが知られている。本研究ではこの関係をSLEの亜種であるmultiple SLEに一般化した。 (2) マクドナルド過程の研究: 近年、可積分確率論と呼ばれる分野では厳密に解ける確率過程の研究が盛んに行われている。特にマクドナルド過程と呼ばれる確率過程は、様々な興味深い模型をその特殊化に含むことが知られており、注目を集めている。本研究では、自由場理論を用いたマクドナルド過程の定式化を行うとともに、新しい可積分模型として、周期マクドナルド過程を提案した。 (3) 共形場理論のフュージョン則についての研究: 2次元共形場理論(Conformal field theory, CFT)の研究において、そのフュージョン則の決定は中心的課題の一つである。本研究ではgenericな中心電荷をもつVirasoro CFTに対して、Kac tableの一行目に現れるプライマリー場の族に着目し、そのフュージョン則を決定した。さらに、相関関数の解析接続を調べることで、上記のプライマリー場のなす圏に対する予想を立てた。本研究の内容は、研究題目にもある共形ループ集団の研究に対して、重要な応用をもつものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記載した通り、本年度は3つのテーマについての研究に取り組んだ。このうち当初の研究計画に直接的に関係するのは、(3)共形場理論のフュージョン則についての研究であり、その他2つの研究内容については当初の研究計画以上の進展と言える。また、これらのいずれの研究内容も、当該の研究分野において本質的な寄与であることは、二度の国際研究集会での招待公演の実績からも窺い知ることができる。また本年度は4本のプレプリントを発表し、そのほとんどは単著によるものである。このことからも本研究が計画以上の進展を見せていることがわかる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、研究計画の内容を進めるとともに、新しく見出した研究課題に取り組む。また、Aalto大学(フィンランド)に研究滞在し、研究計画の一部を共同研究として進める。
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