2019 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation of the glitch noise for the burst gravitational wave detection
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19J01299
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
鷲見 貴生 国立天文台, 重力波プロジェクト推進室, 特別研究員(PD) (30822283)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 重力波 / 環境雑音 / KAGRA / 低温 / 雑音注入試験 / レーザー干渉計 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用初年度の研究実施状況は大きく分けて以下の8つである。当初の研究計画はおおむね達成されており、それ以上の成果が得られた項目がいくつも存在する。(1)KAGRA実験施設全域に加速度計やマイクロフォン等のセンサーを百個以上設置し、環境雑音モニター系を整えた。またスプレッドシートや配置場所マップを作成し管理体制を整えた。(2)安価なノートPCとUSBセンサーを用いたポータブル雑音探索ツールを開発し、環境雑音探索の作業効率を飛躍的に向上させた。これによりいくつもの雑音源の特定・除去に成功している。またこれをイタリアのVirgoに持参して雑音探索に参加し、感度向上に大きく貢献した。(3)低温鏡の冷凍機に由来する常時雑音(磁場、音)を実測し、これが感度に悪影響を与えない程度であることを示した。(4)KAGRAおよびVirgoの実験施設の各エリアにおいて、音響インパルス雑音に対する残響時間測定を行った。その結果、KAGRAの壁面材質が音場を効率よく減衰させていることがわかった。(5)神岡付近で発生した落雷によってKAGRAの鏡が振動する現象を発見し、落雷検知器を坑口に設置した。その結果、重力波観測において見られた突発性雑音のうち落雷に起因する事象の同定に成功した。(6)雑音注入試験(音響、加振、打撃)を行い、干渉計の応答を定量評価した。その結果、いくつかの周波数帯において環境雑音音が感度に悪影響を与えていることを発見し、その大半について混入経路の特定と削減に成功した。(7)KAGRA建設期にPhoton Calibratorのインストール作業に参加し、これをスケジュール内に完遂した。(8)雑音源となる様々な機器の削減において室温が変化し、干渉計鏡のサスペンション制御に影響を及ぼすことが問題となった。そこでこれらの長期間モニターツールを開発し、またこれを補償する温度コントロールも行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の低温部付近の環境雑音モニターに限らず、KAGRA全体の環境雑音モニターと評価・削減まで行うことができた。 また、研究実績の概要に記載した項目のうち(2), (4), (8), およびVirgoでの研究(項目(2), (4)の一部)に関しては、当初の研究計画を超えた成果である。 申請時に計画していた「KEKのテストスタンドにおけるR&D」は、KAGRA実験サイトでの解決が困難な問題が低温部に生じた際の対応であり、実際にはそのような問題は発生しなかったため実施していない。 また、重力波観測データの観測については、十分な観測感度・時間が得られなかったためにバースト重力波探索には至らなかったが、突発性雑音の評価については幾つかの成果(項目(2), (5), (6))が得られている。 上記の理由におり、本研究の進捗状況は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの環境雑音評価試験によって、特に干渉計へのレーザー入射部分および信号出力部分における散乱光が真空容器や真空ダクトの振動(音場雑音によって励起されている)と結合して重力波信号の雑音として現れることがわかったため、これに対する詳細な調査と対策を施す。具体的には真空容器内に360度カメラを設置して散乱光の場所を特定し、容器の防振や実験室の吸音等を行う。また、サスペンションの改修作業に参加し、温度変化や衝撃などの環境擾乱に弱い部分の改善も行う。 これまで十分に扱えていなかった種類の環境雑音対策として、電力・信号ケーブルの整理や電源モニタ、グラウンドの不一致・ループといった電気雑音対策、神岡鉱山内の水流モニターと振動の調査等も行う。 データ解析の面では、雑音注入試験の評価において、現行では取り扱えていない非線形結合や周波数変化に対してモデルの拡張を行う。また、干渉計信号から雑音成分を除去する手法を開発する。
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Research Products
(6 results)