2019 Fiscal Year Annual Research Report
Investigating the mechanisms using water isotopes ratio and improving the predictability through satellite data assimilation of heavy rainfall associated with atmospheric rivers
Project/Area Number |
19J01337
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
取出 欣也 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | Atmospheric River / Data assimilation / Water isotope |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大気の川のメカニズムの解明とデータ同化による予報改善を目指している。2019年度は主に最新の衛星観測により得られた大気中の水同位体比をデータ同化し、天気予測の精度向上を目指す研究を行った。水同位体比とは、存在量の多い水素原子Hと酸素原子16Oに対する、重い同位体原子(重水素Dと18O等)の存在比のことを指し、水の相変化(蒸発や凝結)に対して感度を持つ。本研究では、IASIと呼ばれる衛星に搭載されたセンサから観測された高密度・高精度の水同位体比データを使用し、天気予報の改善を目指した。 実験には、全球で同位体比の挙動が組み込まれている大気循環モデル(IsoGSM)を用いて行った。IsoGSMに観測を同化してインパクトを調べるために、局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)と呼ばれるデータ同化手法を使用した。理想実験の結果、IASIの同位体比は最大で既存の観測のみより20%程度解析場を改善することが判明した。特に、水蒸気に対するインパクトが強く、次いで風場、温度場が改善した。全球で改善の分布を調べると特に低緯度における改善が大きく、改悪している場はほぼ存在しなかった。また、予報実験においても全ての変数が統計的に有意な改善を示した。ここまでの結果は論文に取りまとめ、現在投稿準備中である。またそれと並行して、2019年8月下旬からワシントン大学に渡航し、大気の川と呼ばれる大気において帯状に水蒸気を大量輸送し、川のように見える現象の予報改善のための研究を行っている。ここでは、マッデン・ジュリアン振動とよばれる現象との関係や、赤道付近からのロスビー波の伝搬、ロスビー波の砕破の種類、様々な気候モードとの関連等を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衛星で観測された水同位体比をデータ同化することにより、大気の川の予測のみならず一般の天気予測精度を大幅に改善する結果を得られたことは期待以上の成果である。しかし、大気の川のメカニズムの理解に関しては当初の計画に対してはやや遅れている。前者の方は論文投稿も間近のことから概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
水同位体比のデータ同化実験では、理想条件において予想以上の結果が得られた一方、大気循環モデルで計算される同位体比に系統バイアス等が存在することが判明し、実際のデータを用いることが困難であった。そこで、よりモデルの精度が高い非静力学正20面体格子大気モデルNICAMに同位体比の挙動を組み込んだモデルの使用を予定している。また、大気の川のメカニズム解明に関しても、 「研究実績の概要」に記述した通り、研究を進めていく。
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