2019 Fiscal Year Annual Research Report
Canonical Kahler metrics for Fano manifolds with non-vanishing Futaki invariant
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19J01482
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中村 聡 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 二木不変量 / ファノ多様体 / カップルドケーラーアインシュタイン計量 |
Outline of Annual Research Achievements |
複素幾何学では,与えられたコンパクトケーラー多様体 の“標準的な”ケーラー計量を探すことが中心的問題の1つである.リーマン面(リーマ ン球面,トーラス,高種数閉曲面)は一意化定理により定曲率計量を許容することが分かる.リーマン面の一意化定理の高次元コンパクトケーラー多様体への一般化は,ケーラー アインシュタイン計量(以下,KE 計量)の存在問題と呼ばれている.ここに KE 計量とは,そのリッチ曲率形式とケーラー形式が比例するケーラー計量を意味する.トーラスや高種数閉曲面の高次元化は,第1チャーン類がそれぞれゼロ及び負のコンパクトケーラー多様体である.これらは常にKE計量を許容することが1978年にYau等により証明された.一方,リーマン球面の高次元化である第1 チャーン類が正のコンパクトケーラー多様体 はファノ多様体と呼ばれる.ファノ多様体はKE計量を必ずしも許容しない.特に,1983年,正則ベクトル場のなす Lie 環の指標である二木不変量が二木により発見された.二木不変量が恒等的にゼロでないファノ多様体は KE 計量を許容しない.
KE 計量を許容しない複素多様体に対する KE 計量の代替物として,近年,Hultgren-WittNystrom はカップルドKE 計量を導入した. これは偏微分方程式論的なある種の解析的な拡張であったが,驚くべきことに,彼らはカップルドKE 計量の存在性が代数幾何学的な安定性により特徴付けられることを示唆した. 解析的興味および代数的興味双方からの関心が高く,近年多くの研究がなされている. 通常のKE 計量は自明なカップルドKE 計量と見なせる.本年度の研究として通常の KE 計量のある意味で微小変形することにより,非自明なカップルドKE 計量を構成した.カップルドKE 計量の存在性を安定性により特徴付けるための足がかりの研究となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の元々の研究予定は満渕により導入された一般化ケーラーアインシュタイン計量(GKE計量)の研究であった.GKE計量に対する直接的な研究結果は得られなかったが,GKE計量の考え方を応用してカップルドKE計量の研究を行うことが出来た.実際,非自明なカップルド KE 計量を構成する際に,まず,微小変形により GKE 計量のカップルド版を構成し,それがカップルドKE 計量に簡約される必要十分条件として二木型の不変量の消滅が対応することを証明するという手法を採った.
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Strategy for Future Research Activity |
カップルド KE 計量の存在性を代数幾何的安定性で特徴づける研究を行う.まずは,トーリック多様体などの対称性が高く具体的に手を動かし実験可能な場合に適切な安定性概念を定めることから始める.その後,ケーラー計量の空間上の汎関数とも関連させな がら,最終的には,一般の複素多様体に議論を発展させる.この研究はその後,カップルドKE計量を許容する多様体のモジュライ空間のコンパクト化の研究や,カップルドKEを構成するための計量の時間発展方程式の解析的研究へと発展させていく.
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