2020 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本農村における未婚女性への教育に関する史的研究:階層性と性別役割に着目して
Project/Area Number |
19J01525
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
徳山 倫子 関西学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 農村女子教育 / 新制高校分校家庭科 / 農会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本における農村の女子教育について検討することを通して、農村出身の未婚女性が置かれた社会的ありようを明らかにすることを目的とする。従来の議論では、農村の未婚女性は、家内領域・農村における啓蒙活動・女子労働に関するテーマから論じられてきたが、いずれも近代日本の農村女性に期待さ れた性別役割と階層性の差異を背景とする問題であり、教育が重要な鍵となっていることに共通性がある。 本研究では農村女子教育史としてこれらのテーマに取り組むために、(1)農家出身の未婚女性の学歴と家内領域における役割に関する研究、(2)農村の未婚女性への啓蒙活動と教育に関する研究、(3)繊維工場における女子労働者の教育機会に関する研究という3つの課題を設定した。本年度はおもに(3)について取り組む予定であったが、新型コロナウイルス流行の影響で資料調査が困難となったため、次年度に行う予定であった(1)に着手するとともに、前年度に着手していた(2)の成果発表を中心に研究を進めた。具体的には(1)に関しては、1940年代末から1950年代の新制高校分校家庭科を対象に、農村の未婚女性への教育と裁縫技術習得について検討し、研究会での発表を経て、2022年発行予定の論文集に論文を寄稿した。(2)に関しては、戦前期に県農会により設置されていた女学校における生徒作文を題材に、農村の「模範処女」であることが期待された女性たちの自己意識と表象についての分析を行なった結果を論文化し、2021年発行予定の論文集に寄稿した。また、戦時下の女子教育に関して、地方都市に暮らした女学生の日記の翻刻・分析を行い、成果の一部を研究会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス流行の影響により、調査が困難となったため、「研究実績の概要」欄に記述した、(3)繊維工場における女子労働者の教育機会に関する研究 を進めることができなかった。ただし、研究そのものが停止したわけではなく、本研究課題で掲げるテーマの中で実施可能なものについては研究を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、「研究実績の概要」欄に記述した、(3)繊維工場における女子労働者の教育機会に関する研究をおもに進める予定である。新型コロナウイルス流行が続 いている状況であるが、可能な範囲で資料調査を行う予定である。ただし、今後も資料調査が困難である可能性があることから、これと並行して(1)、(2)の内容についてさらなる研究を進め、成果発表を行う予定である。
|