2019 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical Development for Chemical Reaction Dynamics and Kinetics in Molecular Systems with Heterogeneous and Dynamical Fluctuations
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19J01569
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
松村 祥宏 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | Dynamical disorder / Rate process / Protein dynamics / Fluctuations / Heterogeneity / Molecular theory |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、凝縮分子系における反応・遷移過程の速度係数の揺らぎの分子論的起源を解明するための解析手法を開発し、水溶液中のBPTIタンパク質の超長時間(1ミリ秒)の構造遷移ダイナミクスに応用した。BPTIはアミノ酸58残基からなる物理化学研究のモデルタンパク質であり、NMR緩和分散実験によりシステイン残基間ジスルフィド結合の周囲の構造異性化ダイナミクスが観測されている。本研究では、実験で示された3つの構造状態間の遷移過程における微視的内部状態の揺らぎの影響を理論的に調べた。内部状態の揺らぎによる遷移過程の速度係数の揺らぎを求め、速度係数に基づいて遷移を特徴づける滞在確率関数を計算した。その結果、内部状態の揺らぎが遅いために遷移に必要な構造励起が抑制され、従来の熱平衡的な遷移描像とは明確に異なることが示された。また、数マイクロ秒以上の時間スケールでは揺らぎによる遷移の誘起もみられた。本解析手法は、反応・遷移過程における複雑(非マルコフ、非ポアソン)な揺らぎの影響を微視的に明らかにでき、様々な凝縮分子系のダイナミクス現象を分子論的かつ統一的に理解できる。さらに、次年度以降、揺らぎの中で起こる遷移間の相関の解析へ展開し、より深く遷移ダイナミクスを調べることができる。また解析手法では、見通しの良い物理モデルを経由しており、その統計物理学的な基礎の探求を通して速度係数の揺らぎの新たな記述(縮約方程式理論)を開拓できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、解析手法の開発および応用を達成し、次年度以降の研究課題への展望が得られているため、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を展開することで、目標を達成する。理論的枠組みを確立するとともに、様々な凝縮分子系のダイナミクス現象に応用し、分子論的かつ統一的な理解を確立する。
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Research Products
(2 results)