2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J01606
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中野 泰博 東京大学, 東京大学 定量生命科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 肝再生 / 肝前駆細胞 / 胆管 / 肝細胞 / 分化転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓は再生する臓器でとして知られているが、この再生は実質細胞である肝細胞が頻繁に増殖することで担われることが分かっている。一方で、肝硬変に代表される慢性肝障害時では、肝細胞の増殖能が顕著に低下することから、肝再生不全に陥ることが臨床上の大きな問題となっていた。このとき、肝内では胆管が増生する反応(再胆管反応)がみられるが、この増生した胆管細胞のうち一部が“肝前駆細胞”として肝細胞へと分化転換することで、再生に寄与することが以前より示唆されていた。近年になって、我々を含む複数のグループがその可能性を細胞系譜追跡(Genetic lineage tracing)を用いて示してきたが、胆管細胞の運命を追跡するための蛍光たんぱく質が隣接する肝細胞に漏れ出ている可能性や、分化転換効率が非常に低いことやその分子機序など、不明瞭な点が多く残されている。 本研究課題はこの肝前駆細胞の動員機構を明らかにし、それを応用することで障害肝の再生を促進することを目標とする。本年度においては、この肝前駆細胞が存在することを示すため、遺伝子組換えマウスを用いて、起源となる胆管細胞の細胞運命を子孫細胞までトレース可能な細胞系譜追跡の実験系を確立した。現在は、このマウスに対して、肝臓に長期間の慢性障害を誘導し、肝細胞への分化転換が起こるかを検討している。今後は胆管細胞から肝細胞へと分化転換を起こす分子機序の解明を進め、これを応用することで慢性肝障害マウスモデルにおける肝再生を促進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Krt19-CreER/R26-tdTomatoマウスへタモキシフェンを投与し、胆管細胞を特異的に遺伝子ラベルする条件を確立した。同マウスを用いて、研究計画当初に予定していた「肝細胞への細胞周期停止を伴った慢性肝障害の誘導」による肝前駆細胞動員モデルでは、胆管細胞の増生は認められるものの、肝細胞への分化転換は認められなかった。また、同モデルでは胆管細胞から隣接する肝細胞へと蛍光たんぱく質が漏れ出ていることが示され、これまでの複数の報告においても、この漏れ込み現象によって胆管細胞が肝細胞へと分化転換したと誤認している可能性が示唆された。また、新たな分化転換モデルの確立が必要となったことから、現在はKrt19-CreER/R26-tdTomatoマウスを利用し、種々の慢性肝障害を誘導したあとの再生過程を評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、新たな胆管細胞から肝細胞への分化転換モデルの確立を行い、このin vivoモデルを用いて分化転換に働く分子機序の解明に挑む。また、in vitroにおける胆管オルガノイドを樹立し、目的遺伝子の発現調節によって肝細胞へ分化転換にするかも同時に追求していく。
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Research Products
(4 results)