2019 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝学とケミカルバイオロジーの融合による植物オートファジーの分子理解と応用展開
Project/Area Number |
19J01681
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 咲耶 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー / 光障害 / クロロファジー / 葉緑体 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者らは、紫外線や強光といった光障害時に、障害葉緑体を丸ごと液胞内へとオートファジー依存的に輸送、除去される「選択的クロロファジー」経路の存在を明らかにしてきた。本研究では、特に障害葉緑体を認識するレセプター機構に関わる遺伝子群を明らかにし、その分子レベルでの理解を進めることを目的としている。全く未知であるその理解を飛躍的に発展させるため、植物遺伝学の手法を駆使する順遺伝学スクリーニングと、ケミカルバイオロジーを取り入れるケミカルスクリーニングを行い、得られた結果に応じて両者を連携、補填しながら研究を進める。 令和元年度は、両スクリーニング系の構築および実際の観察を開始した。まず、順遺伝学スクリーニングでは、クロロファジーが高頻度で誘導される変異株に、アルキル化剤EMSによる変異原処理を施した植物系統で、クロロファジーが誘導されなくなる株の単離を行った。令和元年度で6系統のクロロファジー欠損株を得ることが出来た。そのうち2系統については、親株と戻し交配した後の次世代において、クロロファジー欠損の表現型を示す植物体をサンプリングし、その全ゲノム配列を次世代シーケンサーによりリシーケンスすることで、原因遺伝子の絞り込みを行った。ケミカルスクリーニングについては、クロロファジーを抑制する化合物の探索を行った。本スクリーニング系では、クロロファジーのほかに、飢餓時に葉緑体成分を部分的に分解する葉緑体オートファジーの誘導も併せて確認しており、これまでにクロロファジーのみを抑制する (部分分解は抑制されない) 化合物を4種類、クロロファジーおよび部分分解の両者を抑制する化合物を4種類、単離した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた順遺伝学スクリーニングおよびケミカルスクリーニングは、スクリーニング系の構築から観察まで今年度内に実行することが出来ており、両スクリーニングにおいて実際にクロロファジーのみを欠損、抑制している植物体、化合物をそれぞれ複数獲得することに成功した。また、得られた候補株、候補化合物についての解析は随時進めている。よって本計画はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画はおおむね順調に進展しており、大きな計画変更は行わずにすすめていく。注意点としては、これまでの順遺伝学スクリーニングで得られた候補株の中には、既知のオートファジー機能遺伝子の変異体が含まれている可能性もあるため、一般的なオートファジーの機能に影響が無いかどうか、オートファゴソームマーカーであるATG8を蛍光タンパク質で可視化した系統を作出し、確認しながら進める。ケミカルスクリーニングについても、オートファゴソームの形成に影響を及ぼすのかどうかを検討する。
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Research Products
(6 results)