2020 Fiscal Year Annual Research Report
内在性レトロウイルスを摂動とする遺伝子発現および腫瘍病態の変容メカニズムの解明
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19J01713
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊東 潤平 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | がん / 遺伝子発現制御ネットワーク / ジャンクDNA / 内在性レトロウイルス / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
内在性レトロウイルス (endogenous retrovirus; ERV) は自身の配列中に多数の転写調節エレメントを含んでおり、エンハンサーとして、近傍の遺伝子の発現に様々な影響を与えている (Ito et al., 2017, PLoS Genet.)。申請者らは、アメリカ合衆国の巨大がんゲノムプロジェクトTCGAの提供する5,550人分の腫瘍マルチオミクスデータを解析することで、腫瘍においてエンハンサーとして働くERVを網羅的に同定した。そして、ERVのエンハンサー活性が一部の腫瘍においてゲノム全体的に亢進していること、および、ERV由来エンハンサーの活性化が、ERV近傍に密集して存在する抑制性転写因子群KRAB zinc-finger family protein (KZFP) 遺伝子の発現上昇と関連していることを明らかにした。申請者らはさらに、KZFP遺伝子群の発現誘導が、腫瘍の増殖・浸潤に関わる遺伝子群の発現を抑制し、がん細胞の増殖・浸潤能を抑制することを実験により明らかにした。また申請者らは、オミクスデータと臨床データの統合解析により、腫瘍におけるERV・KZFPの発現が高い患者ほど良好な予後を示すことを明らかにした。まとめると、申請者らは、腫瘍オミクスデータを対象としたビッグデータ解析およびがん細胞を用いた実験的検証を組み合わせることで、ERV&KZFPにより駆動される遺伝子発現制御ネットワーク の存在を明らかにし、このネットワークが腫瘍形質の変容、特に腫瘍抑制に関与しうることを実証した。本研究成果をまとめた論文を、国際学術誌「Science Advances」に上梓した(Ito and Kimura et al. 2020, Sci. Adv.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的としていた「腫瘍の遺伝子発現制御ネットワークを司る内在性レトロウイルスの同定および機能解明」に関して、既に研究成果をまとめ、国際学術誌「Science Advances」に上梓した(Ito and Kimura et al. 2020, Sci. Adv.)。 さらに、令和2年度には、研究計画を「体細胞(非がん細胞)において遺伝子発現制御ネットワークを司る内在性レトロウイルスの同定および機能解明」へと拡張して実施することができた。本研究成果についてもbioRxivにて公開しており(Ito et al., 2021, bioRxiv)、また国際学術誌に論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き「体細胞(非がん細胞)において遺伝子発現制御ネットワークを司る内在性レトロウイルスの同定および機能解明」についての研究計画を推進し、学術論文としてまとめる方針である。
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Research Products
(19 results)