2021 Fiscal Year Annual Research Report
内在性レトロウイルスを摂動とする遺伝子発現および腫瘍病態の変容メカニズムの解明
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19J01713
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊東 潤平 東京大学, 医科学研究所, 特任助教
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | がん / 遺伝子発現制御ネットワーク / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト内在性レトロウイルス (HERV) はゲノムに存在するジャンクDNAの一種である。HERVの一部はエンハンサーとして働き、近傍に存在する遺伝子の発現に様々な影響を与える。HERVのエンハンサー活性は、一部のがん細胞において特に活性化していることが知られている。腫瘍において多数のHERVが一度に活性化すると、HERV近傍に存在する多数の遺伝子の発現が変化し、腫瘍の形質が大きく変化する可能性があるが、この可能性は検証されていなかった。 本研究では、TCGAの提供する12種類のがんの腫瘍マルチオミクスデータ (5,470人分) を解析することで、腫瘍におけるHERVの活性化が遺伝子発現および形質に与える影響を解析した。その結果、一部の患者の腫瘍において多数のHERVが協調的に活性化していること、さらに、活性化したHERVはエンハンサーとして働くことでKRAB zinc-finger protein (KZFP) ファミリー遺伝子の発現を誘導することが明らかとなった。KZFPは強力な抑制性転写因子であるため、腫瘍におけるKZFPの発現上昇は様々な遺伝子の発現を変化させ、腫瘍の形質を変化させる可能性がある。そこで、がん細胞におけるKZFPの機能を、培養細胞を用いた実験により検証したところ、KZFPの発現上昇はがんの進行に関わる様々な遺伝子の発現を低下させ、がん細胞の増殖および浸潤を抑制することが明らかとなった。さらに、腫瘍におけるHERVおよびKZFPの活性化状態とがん患者の病態の関連を解析したところ、HERVおよびKZFPの活性が高い患者ほど良好な病態を示すことが分かった。本研究の結果から、腫瘍におけるHERVの活性化は、KZFPの発現を誘導することで、腫瘍の進行に対し抑制的に働くことが示唆された。本研究成果は、米国科学雑誌「Science Advances」から出版された。
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Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(13 results)