2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J01767
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
増田 高大 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 圧力制御 / 固溶限拡大 / 固溶強化 / 析出強化 / 結晶粒微細化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、材料強化手段として圧力制御を新たに取り入れ、高圧下で溶体化処理・時効処理を施すことで、固溶強化量と析出強化量を増大させた新たな超微細粒アルミニウム合金の開発を目指している。そこで初年度は、代表的な時効硬化型アルミニウム合金であるAl-Cu 系合金へ高圧環境下で溶体化処理の実施、並びにギガパスカルスケールの高圧を印加した状態での時効処理による組織改質を図った。特に、 SPring-8の高輝度X線を利用したその場観察により高圧環境下における微細組織の変化を解析した。 Al-11.5wt%Cu合金に6GPa・650℃の高温高圧環境下で溶体化処理を施すことで、常圧下における固溶限のおよそ倍である11.5%のCuをすべて固溶させることに成功した。その結果、時効に伴う硬度の上昇量も増加し、ピーク時効を施すことで最大206 HVとなった。SPring-8の高輝度X線を用いたその場観察によると、固溶量を増大した状態においてもGP(1)ゾーンおよびGP(2)ゾーンが形成されることが分かり、GP(2)ゾーンの形成が高強度化に大きく寄与することが確認された。さらに、高温高圧環境下における溶体化処理過程のその場観察の結果、計算科学により推定した状態図通りの温度域で固溶が進行することが明らかとなった。また、超微細粒Al-4wt%Cu合金に高圧を付与した状態で時効を施すことで、析出物の形成速度が遅延され、時効温度・付与圧力を制御することで析出速度も制御できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は、高圧下における材料特性の基礎的な変化に着目して研究を進めた。現在までに、代表的な時効硬化型アルミニウム合金であるAl-Cu系合金において、高圧下での固溶量増大を活用することで通常材の倍への高強度化に成功している。また時効温度の最適化によりさらなる高強度化が予想される。加えて、高輝度X線を用いた高温高圧下でのその場観察および時効に伴うGPゾーン形成のその場観察手法を確立した。これにより、高圧下での溶体化処理過程の明確化に成功し、事前に計算科学で推定した状態図通りに固溶が進行することが明らかとなった。また、高圧下における析出の遅延は種々の温度・圧力条件でも確認しており、巨大ひずみ加工に伴う格子欠陥の導入を併用することで析出速度を任意に制御できることを確認している。本年度に確立したこれらの手法は、他の合金系にも応用可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度ではAl-Cu系合金において高圧下での組織制御の有用性を確認することができた。今後は、まず電子顕微鏡観察によりGPゾーンのサイズや分散状態を明らかにし、固溶量増大により析出形態がどのように変化するのかを調査する。また時効温度の最適化を図り、固溶量と最適な時効温度の関係性を構築する。初年度は固溶強化量および析出強化量の増大の観点から高強度化を図ったが、これに加えて巨大ひずみ加工を施し、結晶粒微細化に伴う機械的特性の変化を評価する。さらにAl-Fe系やAl-Cu-Mg系といった他合金へ高圧下で溶体化処理を施し、高強度化を図る。引き続き、高輝度X線を用いたその場観察を活用することで、高圧下での固溶量増大に重要なパラメーターを見出す。
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Research Products
(8 results)