2019 Fiscal Year Annual Research Report
金属代謝異常に起因する神経変性疾患の病態進行の分子メカニズムの解明と予防法の確立
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19J01778
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
西藤 有希奈 京都薬科大学, 京都薬科大学 薬学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / 輸送体 / 金属代謝制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】ある種の神経変性疾患においては、脳内に複数の金属の蓄積が認められることが報告されており、脳内の金属代謝を維持することは非常に重要である。一方で、脳内における金属の代謝や動態の制御に関わる分子や機序の詳細は不明である。本研究では、脳内金属代謝機構およびその破綻機構を解明するために、脳内への金属蓄積が指摘される老齢マウスにおいて発現が変動する輸送体を網羅的に解析し、その機能を評価することを目的とした。 【結果の概要】老齢マウスにおける脳内金属輸送体の発現を、若齢マウスと比較解析し、脳内金属蓄積に伴い発現が変動する輸送体を網羅的に解析した。 16、32、64週齢のマウスにおいて、新規物体認識試験を行った結果、64週齢のマウスにおいて認知機能の低下を認めた。また、各マウスから大脳皮質および海馬を摘出し、誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS) にて、組織内金属量 (Fe, Mn, Cu, Zn) の差異を比較解析した。その結果、64週齢のマウスの海馬において、上記金属量の上昇が認められた。このことから、老化に伴い脳における金属代謝機構が破綻し、脳内に金属が過剰蓄積していることが予想された。 次に、老化に伴う脳内の金属代謝破綻機構を明らかとするため、脳での金属代謝に関わることが報告されているタンパク質に着目し解析を行った。各組織から、RNA および DNA を抽出し、老齢マウスにおいて発現が変化するする輸送体を網羅的に解析し、脳内金属代謝制御およびその破綻機構に関わる候補因子を探索した。現在、発現変化が認められた候補輸送体については、金属代謝破綻への寄与などについてより詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、老化に伴う脳内金属代謝の破綻機構について解明するための基盤となるデータを得ることを試み、老齢マウスの海馬においてFe、Mn、Zn、Cu等の金属の蓄積量が増加していることを確認すると共に、脳内金属代謝の破綻過程に関与するタンパク質の候補因子について解析を進めた。一方で、これら候補因子の金属代謝破綻への寄与率や、認知機能低下との関連性の解明については、今後の課題としている。 上記のことから、本年度は、今後の研究における基礎となる結果は得られたものの、期待ほどの進展は得られなかったため、当初よりも研究がやや遅れていると判断している。一方で、次年度以降は、培養細胞を用いた候補因子の機能評価や、神経変性疾患モデルマウスを用いた解析など、より詳細な解析を進めていく予定であり、本年度の得られた基礎データを元に研究大きく進展させることを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の解析から得られた情報を元に次年度は、培養細胞を用いた候補因子の機能評価や、神経変性疾患モデルマウスを用いた解析を行う。具体的な内容を以下に示す。
1.得られた候補因子が、実際に神経細胞における金属代謝制御に寄与するか細胞レベルで評価する。ヒト神経芽細胞 (SH-SY5Y 細胞)において候補輸送体の欠損株を作製し、細胞内金属量を ICP-MS にて測定することにより、細胞内において各種金属量が変化するか確認を行う。さらに、当該輸送体を再発現させ、細胞内の金属量を回復させることを確認し、当該輸送体が細胞内金属代謝制御に関わることを実証する。
2.各種神経変性疾患モデルマウスにおいて、見出した輸送体の発現と脳内金属蓄積量相関性を評価し、金属代謝破綻に起因する神経疾患の発症・進行の分子メカニズムを明らかとする。 具体的には、脳内へ Aβ が蓄積するアルツハイマーモデルマウス(PS/APP マウス)等を用いることを検討している。神経変性疾患モデルマウスにおいて、脳内金属蓄積量と上記で見出した輸送体の発現の相関性を正常マウスと比較評価し、病態の進行により、輸送体の発現が変動するか、また、その発現変動により脳内への金属蓄積が増加するか検討を行う。以上の解析を通じて、金属代謝破綻に起因する神経変性疾患の発症および進行の分子メカニズムを明らかとすることを目標とする。
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Research Products
(8 results)