2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation and improvement of dynamic magnetostriction behavior based on microstructure data using combinatorial method
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19J02078
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山崎 貴大 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 磁歪材料 / 機械学習 / コンビナトリアル手法 / 組織制御 / バルクハウゼンノイズ / 振動発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンビナトリアル手法と機械学習を組み合わせた磁歪材料の組織構造予測手法の確立を研究目的とし,令和2年度は,バルク磁歪材料から取得したバルクハウゼンノイズ信号に対して,プログラミング言語であるPythonを用いた解析プログラムを構築し,機械学習によるデータ分析を実施した.特に,(1)データの取得と特徴量の決定,(2)機械学習モデルの生成と妥当性評価,(3)解釈性評価を実施することにより,複雑かつ不規則な発生原理に基づくバルクハウゼンノイズから結晶粒径を推定することが可能であることを見出した.現在、これらの研究成果を学術論文として報告する準備を行っている.以下にその詳細を示す. (1)では,加工熱処理により微細組織制御を実施したFe-Co合金線材を用いて,異なる熱処理を施したFe-Co合金のバルクハウゼンノイズ信号を取得した.得られたバルクハウゼンノイズ信号に対してデータ前処理(スムージング等),高速フーリエ変換を実施し,データセットを作成した.(2)では,機械学習モデルの生成にLightGBMによる回帰分析を用いた.この回帰分析により,比較的高い推定結果を示すことを明らかにした.また,生成した機械学習モデルの妥当性評価を実施した結果,合金組織の相の違いにより適用できる範囲が明らかとなり,本手法の有用性と課題を示すことができた.(3)では,合金組織の平均結晶粒径の推定に寄与すると考えられる特徴量のうち,最も高い貢献度を示したのは,スペクトル波形の出力強度,標準偏差,尖度であることを明らかにした. 一方,バルク試料から薄膜試料へ本手法を適用する際に生じる課題,例えば,薄膜試料の系統的な微構造制御や,磁気信号の検出感度の改善,磁気・磁歪特性の取得等を残しているため,今後の推進方策を実施することにより,本研究課題の達成を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は,バルク磁歪材料から取得した微小磁気信号(バルクハウゼンノイズ)に対して,プログラミング言語であるPythonを用いた解析プログラムを構築し,機械学習によるデータ分析を実施した.また,筆頭著者として学術論文1編,共著者として学術論文1編の研究業績を挙げている.現在,令和2年度の研究成果を学術論文として報告する準備を行っており,おおむね順調に進展していると考えている.以下に進捗状況の詳細を示す. まず,加工熱処理により微細組織制御を実施したFe-Co合金線材を用いて,異なる熱処理を施したFe-Co合金のバルクハウゼンノイズ信号を取得した.さらに,LightGBMによる回帰分析を用いて機械学習モデルを生成し,未知熱処理材料の結晶粒径に対して,比較的高い推定結果を示すことを明らかにした.生成した機械学習モデルの妥当性評価を実施した結果,合金組織の相の違いにより適用できる範囲が明らかとなり,本手法の有用性と課題を示すことができた.また,合金組織の平均結晶粒径の推定に寄与すると考えられる特徴量のうち,最も高い貢献度を示したのは,スペクトル波形の出力強度,標準偏差,尖度であることを明らかにした. このように機械学習を援用した分析手法を用いることで,比較的簡易な測定手法であるバルクハウゼンノイズ測定により,バルクハウゼンノイズ信号から合金組織の推定だけでなく,今まで未解明であったバルクハウゼンノイズの発生原理の解明に繋がることが期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,機械学習を援用したバルクハウゼンノイズ解析の構築を検討し,その妥当性・解釈性評価から,バルク磁歪材料の微構造の推定とその適用範囲に関する知見を得ることに成功した.一方,本研究では,コンビナトリアル手法により作製した磁性薄膜の微構造評価が可能な計測手法の構築を目指しており,本手法をバルク試料から薄膜試料へ適用する必要がある.初年度には,コンビナトリアル手法を用いた傾斜組成や傾斜構造を有する磁歪薄膜の作製手法や,その薄膜試料からのバルクハウゼンノイズ測定手法を検討した.しかし,薄膜試料の系統的な微構造制御や,磁気信号の検出感度の改善,磁気・磁歪特性の取得等の課題を残しているため,これらを最終年度の課題とする. 薄膜試料の微構造制御には,従来の結晶粒径・膜厚を制御したFe-Co合金に加えて,アモルファス中に析出されるFeナノ結晶の粒サイズと磁歪特性を制御可能なFe基ナノ結晶合金の作製も新たに検討する.磁気信号の検出感度の改善には,検出コイルの更なる改良を検討することで,バルクハウゼンノイズ測定における更なるS/N比の向上を目指す.磁気・磁歪特性の取得には,VSM手法および電磁コイルを用いた光てこ法を用いる予定だが,検出範囲の条件から試料膜厚に上限が生じてしまうため,上述した全ての課題を解決する膜厚を検討する必要がある. このような推進方策により取得した薄膜試料の微構造データと磁歪特性,バルクハウゼンノイズの特徴量に対する相関分析から,磁歪特性の向上を目指した微構造制御およびバルクハウゼン効果の微構造データに基づく解明を検討していく.
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Research Products
(3 results)