2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J02096
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 拓人 東京工業大学, 情報理工学院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ハンガー反射 / 疑似力覚 / 触覚 / 力覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では強力な力覚を生起させる触覚の錯覚現象である「ハンガー反射」を利用して,ユーザの動きにバイアスをかけ,スポーツの動き教示に応用する.本年度はユーザの動きにバイアスをかけるハンガー反射の適用箇所を拡張するため,肘への現象適用を試みた. 本年度はフォーム修正の対象として検討しているゴルフスイングにとって重要な腕を対象とした.昨年度は手首でのデバイスの最適化を試みたが,予備検討の中でフォームの修正には手首だけでは不十分であると気がついた.そこで,本年度は適用部位を手首だけでなく,肘への適用を試みた.肘を選定した理由として,既存のハンガー反射適用部位の特徴が「関節付近」・「骨と皮膚の間の構成物が少ない」であり,腕において該当する箇所が肘と肩であったため,まずは肘への適用を行った. ハンガー反射の肘への適用のために肘用デバイスを開発した.本デバイスは既存の頭部・腰部でのデバイスを参考に,フレームに配置したエアバルーンを制御することでハンガー反射の圧力分布を再現する.本デバイスを肘に装着し,肘付近の橈骨及び尺骨へ圧力提示を行い,ハンガー反射の発生条件である皮膚せん断変形(皮膚横ずれ)を発生させる.開発したデバイスを用いて,装着者の力覚生起と知覚力覚方向確認実験を行った.7人の被験者にデバイスを装着させ,ランダムに合計60回刺激提示を行い,刺激提示中の腕の回転角度計測と知覚力覚方向を回外方向・回内方向の強制2択で回答させた.実験の結果,提示した皮膚せん断変形に有意に腕が回転し,知覚力覚と提示皮膚せん断変形方向も有意に高い一致していた.これらより,本デバイスの皮膚せん断変形提示による力覚提示が確認され,ハンガー反射の肘適用が実現された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度の成果に加えて,ハンガー反射現象の適用範囲を肘にまで広げた.当初の計画通り本現象の適用箇所を増やすことで,将来的な適用範囲を広げることができた.本研究で対象としているゴルフにおいて,肘の姿勢はスイングフォームにおいて重視されるポイントであり,初心者が修正される典型的なポイントでもある.本年度は開発したデバイスによって肘への力覚提示を実現し,実験によってもデバイスの効果を確認した.以上のように本研究は当初想定したように進捗していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今度は,本年度で得られた知見をもとに,非電源タイプの肘用デバイスを開発し,研究の対象としているゴルフスイングフォームの修正に応用する.肘用デバイスを装着させた初心者にスイングをさせ続けた際のフォームの変化を非装着群と比較する.具体的には,右打ちのバックスイング時には肘を体幹に固定し“脇を締める”ことが理想とされている.よって,肘に回内方向の力覚を生起させた状態でスイング練習させることで,スイングフォームが改善するかを,非装着群と比較する.本デバイスによる練習は,デバイスが軽量・小型であるために従来のウェアラブルデバイスよりもより身体運動への制限が少なくなると考えられる.
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