2019 Fiscal Year Annual Research Report
Stability and bifurcation analysis of the equation of the compressible viscoelastic fluid
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19J10056
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石垣 祐輔 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 圧縮性粘弾性流体 / 時間周期平行流 / 拡散波 / 安定性 / 関数方程式論 |
Outline of Annual Research Achievements |
圧縮性流体に温度など他の物理現象を加えるとより複雑な非線形現象が増えると考えられる.その1つの例として,弾性を考慮した圧縮性粘弾性流体が挙げられる.圧縮性粘弾性流体の運動を記述する非線形偏微分方程式の解の挙動は通常の圧縮性流体と異なるものが現れると考えられ,こうした観点から圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式や量子効果を取り入れた流体方程式などの似たような構造をもつ非線形偏微分方程式に対する数学理論構築の応用を視野に入れて,圧縮性粘弾性流体方程式における時空非一様な解のまわりのダイナミクスの解明とその有効な解析手法の開発を試み,本研究の着手に至った.その一環として,本年度は以下の研究に取り組んだ.
1.層状領域上の時間周期平行流の安定性解析を行った.これまでに定常平行流解の安定性に関して,Reynolds数およびMach数が小さく,弾性パラメータが十分大きいときに漸近安定性を示していたが,今年度は時間周期的外力によって引き起こされる時間周期的平行流の場合の安定性解析への拡張に成功した.
2.全空間上の圧縮性粘弾性流体方程式に対するCauchy問題について静止定常解のまわりの解の漸近挙動の解析を行い拡散波と粘性的弾性せん断波が解の時間無限大における漸近挙動の主要部を与えることを証明した.この結果は圧縮性粘弾性流体方程式の特徴的な性質である拡散波と粘性的弾性剪断波の出現を時間無限大における漸近挙動において抽出した興味深い結果であり,圧縮性Navier-Stokes方程式とは異なる解の性質を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主目的は,輸送方程式に従う物理量の高階微分が運動方程式のストレステンソルに現れる粘弾性流体方程式に対する時間無限大における漸近解析理論,分岐安定性理論を構築して, 相転移現象を記述する Navier-Stokes-Korteweg 方程式,量子効果を取り入れた流体方程式などの同じ構造を持つ方程式系の解の定性的性質と方程式の数理構造との関係の解明, およびそのために有効な解析手法を開発することである. 主に, 圧縮性粘弾性流体方程式の分岐・安定性解析について取り組み, 本年度は以下のような結果が得られ, 現在2本の論文にまとめて投稿中である.
1.層状領域における時間周期平行流の安定性について以下の結果を得た.時間周期的に作用する外力により生じる時間周期的平行流の存在を示し,弾性の影響が強く, Reynolds数とMach数が小さければ, 時間周期平行流は空間周期的な摂動に対して,指数安定であることを示すことができた.
2.運動方程式にある弾性力により生じる弾性せん断波と圧縮性粘性流体がもつ拡散波の影響を念頭に,全空間における静止定常解の安定性解析に取り組み, 以下の結果を得た. 静止定常解の線形化問題を考察し,線形解の表現を構成した.弾性がない場合と異なり, 線形解の速度場の非圧縮部分に粘性と弾性せん波の相互作用で生じる拡散波の影響が現れ, pが2より大きければ, 線形解のL^pノルムは熱核より速く減衰することが解った. 次に, 質量保存を記述する非線形な束縛条件を線形の条件にする座標変換を導入し, 積分方程式を軸とする線形化解析を有効にした. そして, 線形化半群の解析とエネルギー法を用いて非線形相互作用を精密に評価し, 非線形問題の解のL^pノルムの減衰評価をp=1の場合を除いて導出し, 圧縮性粘弾性流体がもつ拡散波の現象を抽出できた.
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Strategy for Future Research Activity |
層状領域における静止定常解および非自明静止状態の安定性解析に取り組む. ここで非自明静止状態とはで与えられた定常外力に対し, 弾性力の反作用によって釣り合いの位置に変位して流れのない状態を表す. 空間周期的な摂動のもと, 弾性パラメータが十分大きければ非自明静止状態が安定であることを示したが, 空間無限遠方で減衰する摂動で考える方が自然である. 具体的には, 層状領域上のSobolev空間の枠組みで安定性を考察し, 解の長時間挙動の詳細を求める. まず, 線形化半群の解析結果を非線形問題に繋げるために, 全空間問題の場合と同様にして, 非線形の束縛条件を線形の束縛条件にする変換を探す. 次に, 圧縮性 Navier-Stokes方程式で用いられた高周波・低周波分解を導入し, 線形化発展作用素のレゾルベントとスペクトルを精密に解析する. 静止定常解まわりの線形化半群は弾性せん断波の出現が予想されるので, 全空間問題と同じくその圧縮性 Navier-Stokes 方程式との相違点を調べる. 線形化解析をもとに, 静止定常解まわりにおける非線形問題の解の減衰評価を導く. 以上の手法を参考にして, Reynolds数とMach数が十分小さく, 弾性パラメータが大きければ非自明静止状態と定常平行流は安定であることを証明する.
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