Outline of Annual Research Achievements |
1.3次元全空間における圧縮性粘弾性流体方程式の静止定常解まわりの解の長時間挙動を考察し, 運動方程式にある弾性力により生じる弾性波と圧縮性粘性流体がもつ拡散波の影響を念頭に, 解のLpノルムの時間減衰評価をp>1の場合で導出した. 特に, p>2のとき,弾性波の出現によって, 解は通常の圧縮性Navier-Stokes方程式より速く減衰することが解った. 以上の結果を以下の手法で示した. まず, 静止状態周りの線形化問題を考察し, 線形解の表現を構成した. 圧縮性Navier-Stokes方程式の場合と異なり, 線形解の速度場の非圧縮部分に粘性拡散と弾性波の相互作用で生じる拡散波の影響が現れることを示した. 次に, 座標変換とFourier乗法作用素を用いて, 質量保存を記述する非線形な束縛条件を線形にする非線形変換を導入し, 積分方程式を軸とする線形化解析を有効にした. そして, 解をなめらかなcut-off関数で低周波-高周波分解を行い,線形化半群の解析とエネルギー法を用いて非線形相互作用を精密に評価した結果, 非線形問題の解のLpノルムの減衰レートをp=1の場合を除いて導出した. 以上のp>1の場合で得た研究成果を国内の研究集会に発表し, 単著論文にまとめて2020年5月に投稿し, 修正を得て2020年9月に受理された. 2. p=1の場合は, Fourier乗法作用素の非有界性が原因で上記のように解のL1ノルムの評価を導出できなかったが, この問題は解決した. Fourier乗法作用素の代わりに密度と変形テンソルの行列式に関する束縛条件を用いて, 密度・速度場・変形テンソルに関する問題を速度場・変位ベクトルに関する問題に定式化することで, 困難点を解消した. 以上のp=1の場合で得た研究成果を単著論文にまとめて投稿する予定である.
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