2019 Fiscal Year Annual Research Report
第3級アミドのC-N結合切断を鍵とする触媒的エステル化反応の開発と反応機構の解明
Project/Area Number |
19J10174
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平井 崇裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アミド / エステル / マンガン / 多核錯体 / アルコキシド錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者は本年度、新規マンガンアルコキシド錯体を触媒とした第三級脂肪族アミドのエステル化反応を達成した。本申請者は新たなマンガン単核錯体が、以前に本申請者が達成したアルコキシ架橋マンガン二核錯体を触媒とした第三級アミドのエステル化反応と同程度の触媒活性を有することを見出した。加えて、このマンガン単核錯体に対して一当量のカリウムアルコキシド塩を添加することで、これまでの触媒活性を凌駕することを見出した。マンガン単核錯体とカリウムアルコキシド塩のアルコール溶媒中での当量反応を紫外可視吸光測定により追跡したところ、新たなピークが観測され、反応初期段階でマンガン単核錯体とカリウムアルコキシド塩、アルコールが反応して、他の化学種が形成することが示唆された。この反応溶液の質量分析を行ったところ、マンガンとカリウムが含まれる錯体由来のシグナルが確認された。これらの結果、反応系中でマンガン-カリウム異種二核錯体が形成し、これがアミドのエステル化反応の優れた触媒になることが示唆された。また、反応速度論解析の結果とも一致した。また、量子化学計算による反応経路のシュミレーションを共同研究者と共同で行い、本反応はマンガン-カリウム異種二核錯体が触媒活性種であること、マンガン-カリウム異種二核錯体の活性化パラメータは、以前に本申請者が達成したアルコキシ架橋マンガン二核錯体の活性化パラメータよりも低いことがわかり、種々の機構解析の実験の結果と一致した。また本触媒は非常に活性が高く、本申請者らが以前に報告した、アルコキシ架橋マンガン二核錯体触媒では適応できなかった第三級脂肪族アミドにも適用できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請者は本年度、新規マンガンアルコキシド錯体を触媒とした第三級脂肪族アミドのエステル化反応を達成した。本申請者は新たなマンガン単核錯体が、以前に本申請者が達成したアルコキシ架橋マンガン二核錯体を触媒とした第三級アミドのエステル化反応と同程度の触媒活性を有することを見出した。加えて、このマンガン単核錯体に対して一当量のカリウムアルコキシド塩を添加することで、これまでの触媒活性を凌駕することを見出した。また、本申請者は種々の当量反応、反応速度論解析、量子化学計算を用いた反応経路のシミュレーションの結果から、本反応は反応系中でマンガン-カリウム異種二核錯体が形成し、これがアミドのエステル化反応の優れた触媒になることを明らかにした。また、本本触媒は非常に活性が高く、本申請者らが以前に報告した、アルコキシ架橋マンガン二核錯体触媒では適応できなかった第三級脂肪族アミドにも適用できることを見出した。本反応はこれまで困難とされてきた第三級アミドの触媒的エステル化反応の中でも最も高い安定誠意を有する第三級N,N-ジアルキル脂肪族アミドに対して、適用が可能な触媒系の初めての報告例である。このように、これまで極めて高い安定性のために達成できなかった基質に対しても適用可能な非常に高活性な新規触媒系の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本反応の基質適用範囲の拡張を検討する。特に医薬品合成に応用可能な基質や、オリゴペプチドなどの天然物の改質への適用を検討する。また、これまでに得られた知見をもとに、触媒の活性点である金属周囲の電子的、および立体的環境を制御するために様々な配位子を設計し、これらを有する新規アルコキシ錯体の単離を行う。得られた錯体は単結晶X線構造解析や各種分光学測定により構造および物性に関する知見を得るとともに、実際の触媒活性との相関についての検討を行うことで、これまでのアミド化合物の触媒的エステル化反応の触媒活性を凌駕する新規触媒系の開発を行う。また開発した新規触媒系によるアミドのエステル化を鍵段階とした天然物や医薬品の新規合成ルートの開拓も行う。
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