2019 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌叢の情報を媒介する腸粘膜組織のmicroRNA
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19J10216
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
逢坂 文那 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | プレバイオティクス / 腸内細菌叢 / microRNA / T細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腸内細菌叢の情報を媒介するものとしてエクソソームの積み荷の一つであるmiRNAの関与を想定したプレバイオティクスの作用機構の一端を解明することを目的としている。そのようなmiRNAを発現する細胞として腸内細菌叢が直接曝露する大腸粘膜組織に着目し、とりわけ大腸粘膜固有層のT細胞におけるmiRNAの発現変化にプレバイオティクスの発酵産物の一つである酪酸が制御性T細胞を増加させるという仮説の検証を行う。難消化性オリゴ糖の摂取がマウスの大腸粘膜固有層単核球(LPL)のmiRNAプロファイルを変化させたというこれまでの知見を基に以下のように検証を進めた。 I.miRNAの発現変化に関与する因子を同定するため、関与が想定される酪酸をマウスから分離した大腸LPLに添加し、miRNAの発現レベルを解析した。しかし、酪酸添加によるmiRNAの発現変化は認められなかった。 II.miRNAの発現変化が腸内細菌叢の変化によるものかどうかを証明するため、無菌(GF)マウスおよび通常(SPF)マウスの大腸LPLのmiRNAの発現比較を行ったところ、GFマウスと比較してSPFマウスで数種類のmiRNAの発現変化を観察した。 III.変化したmiRNAのうちT細胞分化に関与するとされるmiR-200a-3pが大腸LPLから分離したCD4+T細胞において標的mRNAの発現レベルを制御するかどうかをマイクロアレイにより調べた。しかし、miR-200a-3pは大腸LPL-CD4+T細胞のトランスクリプトームを変化させなかった。また、in silico解析により予測されたmiR-200a-3pの標的遺伝子であるStat5a/5bのタンパクレベルについて、miR-200a-3pを導入したJurkat細胞のウエスタンブロッティングを解析したところSTAT5のタンパクレベルの減少は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究実施計画としては、難消化性オリゴ糖摂取による大腸粘膜固有層の免疫細胞におけるmiRNAの発現変化が腸内細菌叢の変化によるものかを腸内細菌叢の移殖により解明することであった。通常(SPF)マウスと無菌(GF)マウスを用いた大腸粘膜固有層の免疫細胞のmiRNAの発現プロファイルについては解析を行ったが、菌叢移殖による確認までには至っていない。また、miRNAの発現変化が酪酸をはじめとする腸内細菌叢由来の因子によるものかどうか検証するため、大腸LPLへの短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)や菌体構成成分の一部である各種Toll-like receptorのリガンド(LPS, flagellin, Pam3CSK4, ODN1585, poly (I:C), Imiquimod)の添加を行ったが、それらの添加によるmiRNAの発現変化は認められず、miRNAの発現を変化させた因子の同定にまでは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果により、大腸粘膜固有層の免疫細胞におけるTh17および制御性T(Treg)細胞の誘導にmiR-200a-3pによる遺伝子サイレンシングの関与を想定している。これより、miR-200a-3pの導入が大腸粘膜固有層の免疫細胞におけるTh1/Th2/Th17/Treg細胞の分化におよぼす影響について、各転写因子およびサイトカインのmRNAレベルを調べることにより明らかにする。さらに、miR-200a-3pの標的遺伝子についてin silico解析によりStat5aおよびStat5bが予測されたことから、ヒトT細胞株であるJurkat細胞およびマウスのCD4+T細胞において、miR-200a-3pがSTAT5(Stat5)のタンパク質発現におよぼす影響をウエスタンブロッティングにより解析する。しかしながら、現在のところJurkat細胞およびマウスCD4+T細胞へのmiR-200a-3pの導入は確認されておらず、エレクトロポレーションによる導入を検討予定である。エレクトロポレーションによるmiRNAの導入を確認したのち、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を構成するタンパク質の一つであるAGO2(Ago2)の抗体を用いた免疫沈降を行うことにより、標的mRNAを同定するmiRNA-mRNAペアリング解析を行う予定である。また、難消化性オリゴ糖摂取によりmiRNAの発現が変化した大腸粘膜固有層の免疫細胞の細胞種を同定するため、セルソーターによる分画を行い、それぞれの細胞種のmiRNAの発現レベルについてRT-qPCRにより解析する
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