2019 Fiscal Year Annual Research Report
理論分析・経済実験に基づく耐戦略的な望ましいオークション制度の設計
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19J10221
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 良祐 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | メカニズム・デザイン / オークション / 耐戦略性 / 経済実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
現実のオークションで発生する制約、貨幣移転の離散性と優先順位に基づくタイ・ブレーキングをモデルに組み込み、資源配分ルールの理論分析を行っている。2019年度に得られた結果は以下のとおりである。(1)本研究で構築した資源配分ルール、agent-optimal priority-argumented Walrasian ルール(aopaWルール)は、ひとびとが戦略的に行動する誘因が発生しない(「耐戦略的」な)配分方法である。(2)優先順位が一般的に「非循環的」と呼ばれる構造を有していることが、aoapWルールが効率的であるための必要十分条件である。(3)効率性や耐戦略性に加えて、各買い手のルールへの参入条件や各売り手の収益の非負性を考慮すると、非循環的な優先順位を伴うaopaWルールが唯一それらの望ましい条件を満たす配分方法であることを明らかにした。 貨幣移転を伴わない非分割財配分問題において、agent-optimalなルールの耐戦略性と効率性については過去の文献にて分析されている。本研究の結果(1)(2)は離散的な貨幣移転が存在するモデルにおいても同様の結果が得られることを示している。また、マッチング理論の文献にて広く用いられる「安定性」より弱い条件を用いて、配分ルールの特徴づけを行ったものが結果(3)である。 メカニズムの性質を分析する際、配分ルールの理論的分析だけではなく、経済実験をつうじて制度の性質を分析することが標準となっている。本研究は複数の財・資源を配分するオークションの実験を計画しており、2019年度では複数の財の配分を行う「同時第一価格オークション」や「第二価格オークション」、同時競り上げオークションの一種である「DGS近似オークション」の三種類のオークションを行える環境を整えた。加えて、同時競り上げオークションの実験データを整理するプログラムを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論分析において、本研究とひじょうにかかわりのある「契約付きマッチング」との関連を精査することに時間がとられ、ディスカッション・ペーパーの公刊が当初の計画より遅れている。 また、当初予定していたオークション実験は、2020年初頭より流行した新型コロナウィルスの影響によりすべて中止せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本来の計画通り、離散的な所得移転を伴う環境における望ましいオークションルールの構築は終了しているため、その理論研究をディスカッション・ペーパーとして公刊する。また、本研究が想定している環境下において、耐戦略性を満たす望ましいオークション制度のクラス内でもっともオークションの収益を最大化する配分ルールを分析する。 新型コロナウィルスの影響が落ち着き次第、2019年度に中止となった複数財オークション実験を実施する。同時競り上げオークションのひとつである「DGS近似オークション」の効率性と収益率を評価するため、「同時第一価格オークション」と「同時第二価格オークション」の実験を行い、各々のオークション制度を比較し分析する。
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