2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J10238
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古屋 貴士 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 散乱逆問題 / サンプリング法 / ヘルムホルツ方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象は、サンプリング法である。サンプリング法とは、散乱逆問題において観測データから未知の領域を抽出するための手法であり、具体的には、Kirsch氏のFactorization MethodやColton氏のLinear Sampling Method、Potthast氏のSingular Sources Methodなどがある。研究目的は、この様々なサンプリング法を統一することである。統一的に捉えることでお互いに補完し合う環境が整い、それらが相乗的に発展していくことが期待される。研究方針は、Factorization Methodを一般化する方向で研究を行う。Factorization Methodは唯一、観測データから未知の領域を抽出する議論が抽象的な一般論としてまとめられている。この点から、Factorization Methodはサンプリング法を統一する理論の基軸になると考えている。 2019年度では、サンプリング法の中のFactorization MethodとMonotonicity Methodと呼ばれる手法の研究に携わった。具体的には、それぞれ異なる性質を持つ物体が混在している複雑な未知領域(混合領域問題)の再構成や、体積を持たない未知の曲線(亀裂問題)の再構成、また、周期性を持つ無限遠方まで続く介在物内の未知領域(waveguide問題)の再構成に関する公式を見出すことに成功した。また、この理論的に導かれた再構成公式を基に数値計算を行い、視覚的にも未知領域が再構成されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の研究成果の中に、Factorization Methodの間違いを見つけた論文がある。Factorization Methodの1つの特徴として、観測データから未知の領域を抽出する本質的な議論が関数解析の枠組みによる一般論で整備されているのだが、その論文では、この一般論の間違いを指摘し、正しいものに修正した。 これを通して、Factorization Methodの一般論を広げる方針でサンプリング法を統一するには限界があることを感じた。 しかし、Monotonicity Methodの研究を進めるにあたり、それを一般化していく方針に切り替えればよいのではないかという考えに至った。その理由は、2019年度に従事した混合領域問題、亀裂問題、waveguide問題のいずれにおいても、Monotonicity Methodを適用するための未知に関する先天的仮定はFactorization Methodの先天的仮定よりも少なく、Monotonicity Methodの適用範囲が広いからである。また、Monotonicity Methodの考え方はFactorization Methodと似たところがあり、Factorization Methodと同様に一般論の整備が可能であることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究とその考察から、Factorization Methodではなく、Monotonicity Methodを一般化していく方向で研究を進める。まず、Monotonicity Methodにおける観測データから未知の領域を抽出する議論を、Factorization Methodの考え方を参考にしながら関数解析の一般論として整備する。そして、その一般論をさらに広げていく方針によって、種々のサンプリング法を統一する。 また、Monotonicity Methodは、Factorization methodが内側から理解する再構成に対して、内側と外側の両側面を持つ手法であるため、理論的だけでなく、数値計算的にも大きなアドバンテージがあると予想できる。そこで、Monotonicityによる数値計算部分の研究も積極的に取り組む。
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