2019 Fiscal Year Annual Research Report
ミヤコグサのベツリン酸輸送体の同定とトリテルペノイド増産への応用
Project/Area Number |
19J10245
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 隼人 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | マメ科 / ミヤコグサ / 植物特化代謝 / トリテルペン / 代謝工学 / 生合成 / 輸送 / 転写制御因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
マメ科モデル植物であるミヤコグサは多量かつ構造的に多様なトリテルペノイド(植物特化代謝産物の一群)を生産する。水耕栽培(土を使わず、栄養溶液のみで栽培する手法)により育てたミヤコグサは胚軸から根にかけて、糖尿病治療薬の医薬品原料としても期待される有用トリテルペノイド、ベツリン酸を多く蓄積する。本研究では、分子生物学的並びに分析化学的手法を用いて、水耕栽培条件下でどのような遺伝子が働くことで多量のベツリン酸の蓄積を可能にしているか明らかにし、代謝改変によるベツリン酸増産を目指す。 本年度の研究において、ミヤコグサのトリテルペノイド組成を包括的に明らかにしたうえで、ゲノム編集法により生合成遺伝子を破壊することでミヤコグサ培養組織におけるトリテルペン代謝改変を達成するなど、今後の研究の基盤となる成果が得られた。ミヤコグサ液体培養根の培地の固相抽出物にベツリン酸が含まれていたことから、本培養系がベツリン酸の輸送体研究に活用できる可能性を見出した。また、ベツリン酸の含量が異なる組織間で比較トランスクリプトーム解析を行うことで、ベツリン酸生合成遺伝子群と共発現する転写因子や輸送体遺伝子を絞り込むことに成功した。得られた候補転写制御因子の系統解析や公共のトランスクリプトームデータの解析を行うことで、我々のトランスクリプトーム解析で得られた数十個の候補遺伝子から数個にまでベツリン酸生合成制御因子の有力な候補を絞り込むことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミヤコグサの包括的なトリテルペン組成の解明とゲノム編集による代謝改変を実践し、Plant and Cell Physiology誌にて誌上発表を行った。ミヤコグサ液体培養根の培地中にベツリン酸が含まれていたことから、細胞外にベツリン酸が排出されること、並びに本培養系をトリテルペン輸送体の研究に活用できる可能性が示唆された。また、トランスクリプトーム解析によるベツリン酸輸送体候補遺伝子の探索を試みた。ベツリン酸蓄積量の異なる組織、細胞層から抽出したRNAを用いて比較RNA-seq解析を行い、ベツリン酸生合成遺伝子群と共に有意に発現上昇する転写制御因子と輸送体遺伝子を明らかにした。当初の計画に加え、当該転写制御因子の系統解析と先行研究との比較からミヤコグサにおいてベツリン酸生産制御に関わることが強く示唆される候補転写因子を数個にまで絞り込んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究から絞り込まれた輸送体遺伝子のクローニングと酵母発現系による機能解析を行う。しかしながら、輸送体タンパク質の膜貫通領域の多さに起因し、輸送体遺伝子のクローニングはしばしば困難を伴う。そのため、当初の目的である「ベツリン酸高蓄積機構の解明と代謝工学的手法を用いたベツリン酸増産の達成」に向け、転写制御因子を活用する別の方策も試みる。前年度の研究から明らかになったベツリン酸生合成制御因子の候補遺伝子を過剰発現する培養組織を作出する。これにより、ベツリン酸の生合成と輸送を包括的に活性化し、ベツリン酸の増産を達成できると期待される。また、本転写因子が候補輸送体遺伝子の発現を直接活性化することが示されれば、当該輸送体がベツリン酸代謝に関与する可能性をより強固なものにできる。
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