2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J10318
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 奈波 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞競合 / COX-2 / 炎症応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の2点について研究を進めた。 (1) 上流の同定:様々な阻害剤を用い、変異細胞と混合した正常細胞のCOX-2の発現が抑制されるのかを検討した。その結果、COX-2の転写因子の上流として機能するProtein kinase C (PKC)の阻害によってCOX-2の細胞競合依存的な発現上昇がキャンセルされることがわかった。さらに、PKCの活性化状態を免疫染色によって確認したところ、正常細胞の単独培養に比べて、変異細胞と接した正常細胞内でPKCの活性が高くなっていることがわかった。PKCには複数のアイソザイムが存在するため、COX-2の発現上昇に関与するアイソザイムを同定しようと試みた。カルシウム依存的に活性が制御されるPKCの阻害剤を検討した結果、細胞非自律的なCOX-2の発現上昇が抑制される傾向を確認した。また、これまでCOX-2の発現に関与すると報告のあったPKCζの阻害剤によってCOX-2の発現上昇が有意差を持って、かつ濃度依存的に抑制された。この結果より、複数のPKCアイソザイムが協調してCOX-2の発現を制御している可能性が示唆された。 (2) 下流の同定:PGE2には下流の膜貫通受容体としてEP1-4の4種類が存在することが知られている。これまでの実験結果から、これらのアゴニスト添加実験によってEP2、EP4の関与が示唆されていた。そこで、これらの受容体を欠損させ、どちらの細胞にPGE2が作用し細胞競合を抑制しているのかを検討した。結果として、予想に反して正常細胞側・変異細胞側どちらの細胞での受容体欠損においても変異細胞の排除効率は変わらなかった。複数の受容体が協調して機能する可能性が考えられる。また、PGE2は細胞内受容体を介さずに直接細胞内で機能するという報告もあることから、今後はこれらの可能性についてアプローチしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
in vitroにおけるシグナル解析によって、COX-2の上流因子としてPKCを同定することができた。またin vivoにおいてはCOX-2 KOマウス、炎症モデルマウスの構築など、来年度のマウスの解析において十分な準備を進めることができた。 さらに、現在までのデータをCommunications Biology誌に発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究室で樹立した細胞競合モデルマウスを用い、変異細胞に隣接した正常細胞内でCOX-2 の発現が見られるかを検討する。同時に、細胞競合モデルマウスとCOX-2欠損マウスを掛け合わせ、COX-2欠損によって変異細胞の排除が亢進するかを検証する。この条件に加えて、上皮細胞に COX-2 の発現を誘導する既知物質(DSS、セルレインなど)を投与し、マウスを長期間(3ヶ月-1年程度)飼育し、変異細胞の行方あるいはがんが生じるのかを検証する。
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Research Products
(2 results)