2019 Fiscal Year Annual Research Report
2次元材料を用いたトンネルトランジスタの量子輸送シミュレーション
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19J10329
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 風渡 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 2次元材料 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / トンネル電界効果トランジスタ / 非平衡グリーン関数法 / 強結合近似法 / デバイスシミュレータ / ヘテロ構造 / バンド間トンネル |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元材料を用いたトンネル電界効果トランジスタの量子輸送デバイスシミュレータを開発することを目的として,本年度は,ファンデルワールス積層構造のヘテロ界面におけるトンネル過程の物理モデルの構築を行なった.まず,第一原理計算によってヘテロ界面の状態を正確に考慮したバンド構造を求め,強結合近似法で求めたバンド構造をフィッティングすることで層間パラメータの抽出を行った.その際,積層方向に周期的境界条件を課した周期的2層構造を仮定し,積層方向のバンド分散を用いてフィッティングを行なった.抽出した層間パラメータと構築した強結合近似モデルは,2次元材料を用いたトンネル電界効果トランジスタの精密なデバイスシミュレータ開発の礎を築くものであり,極めて先進的である.構築した強結合近似モデルのもと非平衡グリーン関数法を用いて,遷移金属ダイカルコゲナイドが積層された構造におけるバンド間トンネルの最大電流密度を様々な材料について計算した.いずれの材料も,チャネル長を長くしていくと,チャネル領域の電子状態が反交差ギャップを持つバンド構造で表される電子状態に近づき,透過エネルギー領域の中間付近に低透過領域が生じることがわかった.また,いずれの材料も,チャネル長を長くすると最大電流密度は一定値に近づくことがわかった.また,ヘテロ構造のほうがホモ構造よりも最大電流密度が平均的に高い値を示すことを示した.また,二セレン化タングステンをドレイン側の材料とした構造が最も高い最大電流密度の値を示すことがわかった.二セレン化タングステンをドレイン側の材料とした構造において高い最大電流密度が得られた理由が,Q点にある衛星谷を介したトンネル効果であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は,2次元材料のヘテロ界面におけるバンド間トンネル過程の物理モデルを構築することであった.その目標を達成するために,VASPを用いた第一原理計算手法を習得し,強結合近似法を用いた層間パラメータ抽出プログラムを開発した.そして,強結合近似モデルと非平衡グリーン関数法とを組み合わせることでバンド間トンネル過程の物理モデルを構築することに成功した.また,物理モデルを構築するだけでなく,様々な材料における輸送特性解析を行い,バンド間トンネルの材料依存性を解析することができた.以上のように,当初の目標を達成し,来年度の研究を遂行するために必要なシミュレータの土台を作成できたため,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に開発したバンド間トンネル過程の物理モデルに現実的な効果の導入を行う.散乱による効果は,非平衡グリーン関数法における自己エネルギーとして取り入れ,歪みや格子欠陥による効果は,強結合近似法におけるハミルトニアン行列の要素に取り入れる.そして,これらの効果がデバイス特性に与える影響の解析を行う.これらの効果の導入により計算量が増大するため,OpenMPを用いた計算の並列化や,機械学習によるハミルトニアンの圧縮を行うことで計算の高速化を図る.また,2次元材料が同一面内で結合した構造を取り扱うことが出来るようにシミュレータを改良する.作成したシミュレータを用いて,トンネル電界効果トランジスタにおける材料選択およびデバイス構造の最適化を行い,理想的なデバイスの設計指針を打ち出す.また,考察したデバイスモデルに対して,デバイス内部のバンド間トンネル電流分布やポテンシャル形状の詳細な解析を行う.そして,材料および構造の違いがバンド間トンネル電流にもたらす違いを明らかにし,デバイス性能向上の要因を解明する.
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Research Products
(7 results)