2019 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of possible factors that regulate Doublesex-independent sexual differentiation which was newly found in the lepidopteran insect
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19J10346
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠原 良太 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | カイコ / 分子遺伝学 / 性決定 / 性分化 / DMRT遺伝子 / ゲノム編集 / 生殖器 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイコゲノム中の3つのDMRT遺伝子(Bmdmrt11E, Bmdmrt93BおよびBmdmrt99B)のうち本年度はノックアウト系統が作製されていなかったBmdmrt11Eについて、当初の予定通りCRISPR/Cas9法を用いて複数のノックアウト系統の樹立に成功した。樹立したノックアウト系統の表現型解析の結果、Bmdmrt11E変異ホモ個体の成熟卵には透明な液体の蓄積による空洞状の構造が見られること、またこれらの雌が造る卵の妊性は著しく低いことを発見した。これらの結果は、Bmdmrt11Eが卵巣特異的な発現を示すというこれまでの事実と一致する。卵が致死する原因を突き止めるため、卵のタンパク質組成や脂質成分の解析を行った結果、一部の脂質成分の含有量が正常雌の卵に比べ有意に減少していることがわかった。さらに卵に異常が生じる原因を遺伝子レベルで明らかにするため、正常雌の卵巣とBmdmrt11E変異体の卵巣を経時的にサンプリングし、RNA-seq解析を実施した。その結果、変異の有無によって有意に発現が変動する遺伝子を複数発見することができた。いずれも機能未知の遺伝子であったが、卵形成因子と関連するものも複数含まれておりBmdmrt11E の下流、また変異体が示す形質の原因遺伝子が含まれていると考えている。一方Bmdmrt93Bについても変異系統の樹立を試みたがこの遺伝子をホモにもつ個体は胚致死となるため難航している。しかし、GO体細胞モザイク変異体解析により、この遺伝子の変異が雄の内部生殖器の欠失を生じることを新たに発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であったゲノム上に存在する3種類のDMRTについて変異体カイコを作製し、生殖器形成への影響を調査するという点について令和元年度までで早々に完了することができた。また、これによって我々が掲げているDoublesex非依存的な性分化を担う因子としてBmdmrt93B に注力していくという方針を定めることができた。一方、このBmdmrt93B については変異をホモにもつ個体が胚致死するという問題が解決できず事実上研究を進展させることができなかった。以上の点を踏まえて令和元年度の研究進捗状況を「おおむね順調に進展している」と自己評価した。 通常の変異体作成が困難であること、既にG0世代の解析によってある程度機能の予測がついていることから、研究の方針を「ノックアウト系統の樹立・解析」から「Bmdmrt93B の発現制御機構の解明」へと転換した。研究開始時にこの遺伝子は昆虫ホルモンの一種であるエクダイソンによって発現誘導がなされることがわかっていた。また、Bmdmrt93B はおそらくメスにおいてBmDSXによる負の制御を受けているものと考えられる。これらと関係する配列をBmdmrt93B の上流・イントロン領域で検索を行ったところ第1イントロンにおいて2つの配列が近接している部位を発見した。さらに、これらを含む短配列はキイロショウジョウバエやハスモンヨトウなど他の昆虫種のdmrt93B のgene bodyにも保存されていることがわかった。現在、すでにBmdmrt93B の第1イントロンを増幅可能なprimer セットを所有しており、増幅された配列についてデータベースとおおむね差異のないことを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はBmdmrt93Bの機能および制御領域同定に注力することとした。この遺伝子の制御領域について、今年度に同定したエクダイソンが機能するのに必要な配列(EcRE)およびDSXの結合配列(DsxRE)をもとに研究を進展させていく。まずDsxREに対してCRISPR/Cas9およびCRISPR/Cas12を適用し、ノックアウトしたメスにおいてBmdmrt93B が発現するか、またオス内部生殖器が形成されるかを解析する。また、令和元年度に作成した抗BmDMRT93B抗体を用いたChIP-seqを行ってBmdmrt93B の下流候補遺伝子を同定した上で、当研究室がもつBmdsx ノックアウト個体のトランスクリプトーム解析データを比較してDoublesex非依存的な性分化を担う遺伝子を特定していく。EcREについてはノックアウトによる胚致死が予想されるため、培養細胞を用いたレポーターアッセイや抗EcR抗体によるChIP-qPCRを行うことでBmdmrt93B の第1イントロンに見られるEcREが機能しているのかを評価する。その後、このEcREについてのエンハンサートラップ系統を作成し、レポーターの発現が精巣もしくは生殖器原基にみられるかを確認することで実際に生体内で働くエンハンサーであることを証明していく。
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Research Products
(10 results)