2019 Fiscal Year Annual Research Report
日本の学校教育おけるNOS教授の導入に関する研究:高等学校の探究活動に着目して
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19J10383
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 優子 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 科学の本質 / 国際バカロレア / 探究活動 / 授業研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「科学の本質」を導入した授業方法の開発に向けて、日本の高等学校における探究活動の実施状況を把握した。まず、調査対象校において実施した質問紙調査の分析を行った。これは、生徒の「科学の本質」に対する理解度を調査する質問紙であり、選択式の設問と記述式の設問で構成されている。質問紙調査は、探究活動開始前後で行いその変化を明らかにした。探究活動の前後での変化について、選択式の設問の分析から、いずれの「科学の本質」の要素においても探究活動前後では得点に有意な差が認められなかった。しかし、ルーブリックを用いた記述の分析からは、いずれの要素においても得点に変化がみられた。このことから、選択式の設問には反映されないものの、記述において深まりが見られたことから、探究活動において「科学の本質」に対する理解が部分的に深まる可能性が示唆された。 また、理系生徒と文系生徒の比較では、探究活動前の得点には差がないものの、探究活動後には文系ゼミの生徒の方が理系ゼミの生徒よりも有意に高い得点となった。このことから、理系ゼミの生徒よりも文系ゼミの生徒の方が探究活動を通じて「科学の本質」に対する理解が深まったことが示唆された。その理由として、理系ゼミでは個人作業が主であったのに対し、文系ゼミではゼミ形式で議論する場を設けていたことが考えられた。以上の結果から、探究活動において「科学の本質」が深まる場面をより詳細に明らかにした上で、協同的な活動を取り入れた教授法の開発が有効であることが示唆された。この結果は、理科教育学会全国大会にて口頭発表を行った。 さらに、国際バカロレア認定校において「知の理論」の授業を調査した。「知の理論」では、自然科学とそれ以外の学問領域の比較を行ったり、その結果についてグループごとに対話し、それらを発表し合う形で、協同的な学びの中で「科学の本質」が学ばれていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、概ね計画通りに研究が進捗したと言える。国際バカロレア認定校について、当初の計画では海外の授業を分析・検討する予定であったが、国内の認定校の調査となった。その理由は、海外の学校との予定が合わないことが挙げられる。しかし、国内の認定校においても、効果的な教授が行われており、十分な成果が得られた。 また、日本の高等学校における探究活動の実施状況についても、質問紙調査だけでなく毎時間の授業記録に基づいた分析ができている。しかし、授業記録のデータが多く、分析作業が終わっていない状況である。これについて、市販の分析ツールを使うことで効率的に分析が進められていることから、大幅な遅れにはならないと考えられる。 授業分析の遅れにより、教授方法の開発にも一部遅れが生じているが、新たに研究協力校が見つかり、すでにあるカリキュラムの中に「科学の本質」の要素を取り入れる形で開発することになったため、当初の計画よりも教授方法の開発がスムーズに進むことが予想される。 以上を踏まえて、本研究は概ね計画通りに進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、教授方法の開発と、その実施及び評価を行う。研究協力校との協議の結果、既存の探究活動のカリキュラムに「科学の本質」の要素を取り入れる形で教授方法を開発し、実施できる見通しである。さらに評価についても、探究活動前後の質問紙調査に加え、ディベート活動を利用したパフォーマンス評価を導入することができる見通しである。そのため、「科学の本質」の理解にとどまらず、理解した知識を活用する過程までの調査が可能になると考えられる。 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、研究協力校での授業開始が遅れているが、カリキュラムの一部変更等を行い対処する計画である。
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