2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J10397
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
多田 遥人 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ヌクレオチド除去修復 / DNA損傷認識 / ヌクレオソーム構造 / タンパク質精製 / XPC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゲノム上に生じたDNA損傷に対し、遺伝情報を安定に維持するために生物が取っている戦略を理解することを目的としている。 クロマチン構造の変換を介したDNA損傷認識の制御機構を詳細に解明することは、基礎生物学的、医学的にきわめて重要である。これを調べるため、効率良くヌクレオソーム・アレイを形成できるDNA基質の設計・調製を行い、精製ヒストンタンパク質を用いて試験管内でアレイの再構成を行った。この損傷クロマチン基質と精製した組換えNERタンパク質因子で無細胞NER反応を行ったところ、裸の損傷DNA基質と比較して損傷除去効率の顕著な減弱が見られた。これをアッセイ系として用い、損傷DNA基質がクロマチン構造を取った場合にNER反応の促進に関わる因子の探索とその分子機構の解析を進めている。また、この実験を進めるにあたり、10個のサブユニットから成る基本転写因子TFIIHの組換えタンパク質を大量に、かつ高濃度で調製することが必要となったため、共同研究先である米国国立衛生研究所のWei Yang博士の研究室に短期間滞在して必要な材料の発現・精製を行った。 一方、NERのDNA損傷認識に必須なXPC複合体のサブユニットであるCentrin 2はCa結合性のEF-handモチーフを複数持ち、中心体や細胞の繊毛形成にも関与する多機能タンパク質であるが、無細胞NER反応系を用いた実験により、それぞれの細胞機能においてEF-handモチーフが異なる役割を持つことを示すことに貢献した。また、ゲノムDNAに誤って取り込まれたリボヌクレオチドによる突然変異誘発機構に関する共同研究に参画し、8-オキソグアニンリボヌクレオチドがNERの基質となることを無細胞系を用いて明らかにした。これらの研究成果を含む共著論文2報を国際誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヌクレオソーム・ポジショニング配列を11個含む損傷DNA基質の設計・調製は完了しており、実際にヌクレオソームを形成できることを確認したが、ヌクレオソーム形成効率の至適化とヌクレオソーム・アレイの精製方法の検討に予想外に時間を費やすこととなった。損傷DNAの調製方法や反応スケールの再検討を行うことで問題の解決に一定の目処をつけることができたが、当初の研究計画に照らして進捗はやや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
損傷を含むヌクレオソーム・アレイを基質とする無細胞NER反応系を用いて、修復反応を促進する因子の探索・同定を進める。具体的には、NERにおける損傷認識を担うタンパク質であるDDB2またはXPCにタグを融合したものを安定発現するヒト培養細胞から穏和な条件でタンパク質複合体を調製、およびヒト培養細胞の粗抽出液をカラムクロマトグラフィーにより分画する。これらをクロマチン構造を取ったDNAを基質とする無細胞系に加え、NER反応を促進する活性を探索する。活性を担う因子の精製、同定を行い、その分子機構を明らかにすることで細胞内におけるNER反応の分子基盤を詳かにしていく。
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Research Products
(6 results)