2019 Fiscal Year Annual Research Report
アルミニウム二次電池正極に用いる硫黄ドープ炭素材料の開発
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19J10398
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上村 祐也 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アルミニウム二次電池 / 硫黄系正極 / ハロアルミネート系イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属アルミニウムを負極とするアルミニウム二次電池は新しい二次電池として注目されている。その性能向上のためには、高容量な正極材料を開発する必要がある。硫黄を用いた正極は高容量化が期待できるが、電解液候補であるハロアルミネート系イオン液体中における硫黄の反応に関する知見は非常に少ない。本研究課題の目的は、上記イオン液体中における硫黄の電気化学的な反応について調査し、硫黄を活用した正極を開発することである。一年目は、ハロアルミネート系イオン液体中における硫黄の反応挙動と、イオン液体を構成するカチオンが及ぼす影響について調査した。前者については、硫黄と炭素材料を加熱処理によって複合化した材料を作製し、それを用いた電気化学測定を行うことで硫黄の反応について調べた。硫黄と炭素の複合材料と炭素のみの反応挙動を比較したところ、明確な差異が確認され、ハロアルミネート系イオン液体中で硫黄が電気化学的に反応していることが確認できた。また、金属硫化物を用いて電極を作製し、その反応挙動についても調査した。いずれの場合も類似した挙動を示し、硫化物が反応の過程で生成することを示唆する結果となった。カチオンが及ぼす影響については、AlCl3とImClで構成されるイオン液体と、ImClの一部をNaCl等に置き換えたものを比較することで検討した。電解液の構成要素の一部をNaClに置き換えた場合でも、硫黄の反応が抑制されることはなく、AlCl3とImClのイオン液体を用いた時と同様に硫黄が反応することが確認できた。これらの反応に関する知見が得られたことは、今後の材料選択及び設計に大きく寄与するものと考えている。硫黄と炭素の複合材料については、有機化合物等を利用した硫黄ドープ材料の作製も行い、その特性評価を行った。これらの材料は硫黄系正極材として機能することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において、「硫黄の反応に関する知見収集」「ハロアルミネート系イオン液体の構成イオンの変化が及ぼす影響の調査」「硫黄と炭素からなる複合材料の検討」を課題として挙げており、いずれも調査を実施することができた。硫黄の反応についての調査では、反応過程で生じる化学種に関する情報を得ることができ、中でも中間生成物が正極性能に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。これらの情報は性能向上のために材料の検討を重ねる上で有益なものであり、今後の研究につながる重要な成果を挙げることができたと判断できる。電解液に関する調査についても、カチオン種が及ぼす影響は小さいことが分かったことから、電解液選択の幅が広いことが確認できた。硫黄ドープを目的とした材料開発については、硫黄の添加量や反応の効率が低く、十分な電池性能を得られなかったことから、収集した知見を足掛かりに更なる改善を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
硫黄と複合化させる炭素材料に対して、反応過程で生じる生成物の電解液への溶出を抑制する機能を付与することで電極性能の改善を進めていく。硫黄の低い導電性に起因するエネルギー損失については、単体硫黄と硫黄を含む化合物では反応の挙動に変化が生じる可能性があることから、硫黄化合物を用いて昨年度に引き続き硫黄ドープ材料の検討を行っていく。また、材料の微細化によっても電極全体での導電性向上が期待できることから、材料の形状等が電池特性に及ぼす影響を調査する。
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