2019 Fiscal Year Annual Research Report
農業用管水路における圧力観測を用いた漏水検知に関する研究
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19J10410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅田 洋平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 管水路 / 漏水検知 / 圧力変動 / 減衰 / ストックマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
管水路の漏水を管内の圧力観測によって簡便に検知する方法について研究を行っている。本研究の主な目的は,通水中に下流にあるバルブを閉塞することで管路内に意図的に圧力変動を発生させ,圧力変動の減衰のパターンから漏水位置を推定することである。摩擦がない理想的な状態では,直線管路内の圧力変動の減衰は漏水によってのみ生じ,漏水部から流出するエネルギーから,圧力変動の減衰率と上流からの漏水位置は線形の関係になることが明らかになっている。これを摩擦がある場合に適用したところ,もともとの管内圧力に対して非常に小さい圧力変動であれば,摩擦による減衰と漏水よる減衰は独立して扱うことができることが明らかになり,摩擦がある場合の圧力変動の減衰率と漏水位置に関するモデル式を構築することができた。このモデル式によると,漏水による減衰率と漏水位置との関係は摩擦に関する二つのパラメーターによって変化し,摩擦が小さい場合は上述のように線形で表すことができるが,摩擦が大きくなるにつれて線形とはかけ離れた関係になることが明らかになった。数値シミュレーションによって,管径,管の長さ,管厚などが異なる様々な管路における圧力変動に対してモデル式の有効性を確認することができた。また,模型管路実験においてもモデル式を使用して,漏水位置を推定できることが明らかになった。以上から,直線管路の場合では,数値シミュレーションを用いることなく,圧力変動の減衰率からモデル式を用いて簡便に漏水位置を推定することができた。しかし,分岐を持つような複雑な構造を持つ管路では,管路内の圧力変動はより複雑なものとなり,上記のモデル式には従わないことが明らかになっている。そのため,今後は上記のモデル式を現場の管路で検証することに加えて,深層学習を用いることで複雑な構造を持つ管路に対して,圧力変動を利用した漏水検知を実現していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的であった,直線管路内の圧力変動の減衰と漏水位置との関係について詳細に解明することができたため,研究は概ね順調に進んでいるといえる。しかし,分岐などの複雑な構造を持つ管路においては,減衰と漏水位置との関係の解明は進んでおらず,翌年度の課題である。また,分岐管路内の圧力変動は直線管路と比べて非常に複雑であるため,既存の理論的な解析だけでなく,深層学習も利用して,その両面から検討を進めることで本漏水検知法の適用性の拡充を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,現場の管路について圧力観測を行い,漏水が無い場合,また模擬漏水を起こした場合等,漏水条件ごとの圧力変動データの収集を行う。これらのデータに対して,これまでに開発したモデル式を利用した漏水検知法の適用を行い,その有効性について調査する。また,深層学習を用いた漏水検知法について検討を行う。これは主に分岐を含むような複雑な管路に対して実装を試みるものである。漏水位置と漏水量の条件を変化させながら圧力変動データを学習させていき,実際に観測した圧力変動データを入力すれば,漏水位置と漏水量が出力されるような深層学習モデルの構築を目指す。学習データには模型管路で観測した圧力変動データや数値シミュレーションから計算した圧力変動データを用い,学習の際には今までに得られている圧力変動と漏水位置,漏水量との関係に関する知見を利用することで,学習効率および漏水検知精度の向上を図る。深層学習モデルの検証は,現場管路における圧力変動データを用いて行う。以上の漏水検知法について管路条件を変化させながら,網羅的に検討を進めることにより,管路の形状に応じた適切かつ簡便な管内圧力変動を利用した漏水検知法,および漏水位置や漏水量ごとの本手法における検知精度について体系化していく予定である。
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