2019 Fiscal Year Annual Research Report
四階放物型方程式系における漸近解析―保存則を伴う爆発現象の解明とその応用―
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19J10424
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三宅 庸仁 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 高階放物型方程式 / 正値解 / 漸近解析 / 弱形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
四階放物型方程式に対する解の漸近解析を行う上での問題点の一つに, 「比較原理の崩壊」が挙げられる. 二階放物型方程式の場合には, 「初期値の大小関係は保存される」という性質が広く成り立つことが知られているが, 四階放物型方程式の場合, 一般には崩壊することが知られている. 特に, 最も単純な四階放物型方程式である重調和熱方程式についてでさえ, 初期値が非負値関数であったとしても, 解は負値をとり得る. このような正値性保存則の崩壊に伴い, 四階放物型問題の解に対する各点評価を与えることは困難となる. これらを踏まえ本年度は, Hans-Christoph Grunau 氏 (University of Magdeburg) と岡部真也氏 (東北大学) との共同研究として, 重調和熱方程式に対する正値性保存則の崩壊メカニズムの解明に挑んだ. 具体的には, 正値性が保存されるための初期値の十分条件及び必要条件を考察した. また, ここで得られた解析結果を冪乗型非線形項をもつ半線形四階放物型方程式の正値時間大域解の構成に応用することに成功した. また, 保存則を伴う四階放物型方程式に対する初期値境界値問題の漸近解析を, 岡部真也氏 (東北大学) との共同研究として行った. 具体的には, Galerkin 法を用いて時間局所解を構成し, 解が時間大域的に存在するための初期値に対する十分条件を導出した. さらに, Galerkin 法により構成した近似解がみたす方程式が元々の方程式に類似した勾配構造を有することに着目し, 定数に収束する時間大域解の漸近挙動を考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 当初予定していたような, 方程式が有する保存則に着目した解析手法を構築するには至らなかった. しかし, 前者の研究では正値性保存則崩壊のメカニズムの解析という, 四階放物型方程式に対して基礎的かつ重要な観点に着目した解析により, 一定の成果を得ることに成功している. また, 後者の研究では Galerkin 法と方程式の有する勾配構造のみを用いた漸近解析という, 方程式の階数に依存しない解析手法を新たに構築することに成功している. 以上により, 今後の解析を進めるために非常に有用と考えられる研究成果を上げることができたためである.
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Strategy for Future Research Activity |
まず, 四階放物型問題に対する正値性保存則が成り立つ初期値についてより詳細な解析を行う. 具体的には, 球対称斉次関数に初期値を限定し, 正値関数か否かが別れる指数の閾値を特定することに挑む. さらに, この解析結果を応用することで, 冪乗型非線形項をもつ半線形四階放物型方程式の正値時間大域解が存在するか否かを分ける指数を特定する. 次に, 当初の目的であった保存則を伴う四階放物型方程式に対する全空間上での初期値問題に対する漸近解析を行う. 具体的には, 同問題に対する勾配爆発解の構成や時間大域解の ω limit set の考察を行う.
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