2019 Fiscal Year Annual Research Report
Origin of facial recognition in vertebrate animals -interspecific comparison using fish-
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19J10541
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
川坂 健人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2) (60908416)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 顔認知 / 顔の倒立効果 / 全体処理 / 視線追従 / 個体識別 / 魚類 / シクリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、カワスズメ科魚類のネオランプロローグス・プルチャーで「顔の倒立効果」を検証した。先行研究(Kawasaka et al. 2019)では霊長類やその他動物で一般的な「正立の顔に馴化させたあと正立顔・倒立顔の弁別課題を行い、それぞれの成績を比較する」という手順のみ実施したが、本実験では「倒立の顔に馴化させたあと正立顔・倒立顔の弁別課題を行う」という手順で実験した。これにより、「顔の倒立効果」が馴化刺激の種類ではなく、倒立で提示されること自体の影響であると示すことができた。これは、顔の認知において向きが非常に重要であることを示し、顔は各パーツの微妙な位置関係から認識されるという「全体処理」をより強く示唆するものである。顔の倒立効果は様々な分類群で検証されているが、このような追試験は霊長類以外では珍しく、魚類における顔認知研究の客観性をより高めるものと考えられる。 加えて、当年度はプルチャーで「顔への注視を引き起こす要素」の探求を行った。プルチャーに顔の様々な要素(眼、模様、輪郭など)を組み合わせた刺激を提示し、顔への選好性がみられるか観察したところ、眼が大きく影響することが明らかとなった。このような眼への注視はヒトや霊長類、鳥類でも顔認知の一側面として知られている。今回の研究から、こうした性質が魚類から霊長類まで共通のものであることが示され、これは脊椎動物における顔に基づいたコミュニケーションの進化に新たな知見を与えるものである。これら成果については現在論文を執筆中である。 また、プルチャー以外の近縁種による検証として、同所的に生息するジュリドクロミス属魚類やネオランプロローグス・サボリ、系統的に離れたゼブラフィッシュを対象に「顔に基づいた個体識別」の予備実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のうち、上記の「顔の倒立効果」と「顔への注視を引き起こす要素」の探求に関しては概ね順調に進めることができた。早急に成果をまとめて論文として投稿したい。そのほか研究計画に記した「視線追従」「他種を用いた種間比較」については実験手順等の確立に時間を要し本年度中に完成させることはできなかったが、後者に関しては予備実験が現在順調に進行しており、新年度中には成果が得られるものと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画で実現できなかった課題については引き続き取り組むとともに、「異人種効果」や「表情」といった「顔に基づいた個体識別」や「視線追従」以外の顔認知の諸側面について実験を行い、ヒトや他の動物との比較を行いたい。
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