2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Contrastive Study on Peculiar Modificational Expressions in English and Japanese: Form, Meaning, and Function of A-N Expressions
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19J10598
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石田 崇 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 形容詞による名詞修飾 / 限定修飾 / 叙述修飾 / 叙述形容詞 (性質形容詞) / 非叙述形容詞 (関係形容詞) / 接頭辞付き関係形容詞 / 派生形容詞 / 形容詞化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、英語と日本語における形容詞と名詞の修飾関係について、(1)叙述 (性質) 形容詞が名詞を修飾する際、その修飾関係が特異であるように思われる事例に関して学会、論文等で成果を発表し、さらに、(2)名詞由来の修飾要素 (英語:関係形容詞、日本語:名詞+-の) による名詞修飾に関して学会等で発表を行った。 (1)については、まず、前年度までに行ったデータ収集・観察と記述を基に発表や論文にした内容を踏まえ、叙述 (性質) 形容詞による特異な名詞修飾表現について、第20回日本認知言語学会で日本語の場合に関して発表を行い (例:明るい味)、第15回国際認知言語学会において、英語の場合に関して発表を行った (例:bright taste)。以上2件の発表によって、日英語ともに叙述 (性質) 形容詞が名詞修飾する際に見られる特異性は、本来修飾されるべき名詞が表面上現れていないことによるものであり、それが解釈可能なのは、当該表現が用いられる文脈や我々の一般知識からその名詞が概念的に補われるからであるという一般化を明らかにし、その仕組みを詳らかにした。 (2)については、特に、第37回日本英語学会で発表した「英語の接頭辞付き関係形容詞について」が重要であった。この発表によって、関係形容詞が接頭辞を伴った場合 (例:monochromatic, antidemocratic) に述語位置に生起できるのは、接頭辞の無い関係形容詞が述語位置に生起できる条件 (対比環境によって主要部名詞削除が可能な場合) と同様に、対比性という文脈特性が正にその接頭辞によって喚起されるためであるということを実証し、この研究は学会で高く評価され、日本英語学会優秀発表賞を受賞した。 その他、研究活動の成果の一部は、論文や口頭発表などの形で公表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究課題のもと、英語と日本語において、①叙述 (性質) 形容詞が名詞を修飾する際にその修飾関係が特異であるように思われる事例の研究において主な成果をあげるとともに、研究課題の発展として、②名詞由来の修飾要素による名詞修飾の研究も行うなど、きわめて生産的で活発な研究活動を行っている。 このように、①と②のどちらの研究においても当初の研究課題以上の内容にまで含んだ研究を行っており、その意味で、期待以上の研究の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、本年度明らかにした形容詞による名詞修飾に関する分析結果をもとに、Nikolaeva and Spencer (2020) に倣い、名詞概念による名詞修飾 (modification by nominal concepts) に着目する。 まず、名詞由来派生形容詞の代表例である関係形容詞は、もともと名詞であったことから、形容詞でありつつも名詞としての振る舞いも示す。この点で、関係形容詞は異なる範疇の特性を併せ持つ混合カテゴリの一種として見なすことができる。このように、名詞概念を持つ形容詞としての関係形容詞について、その形式・意味的特性を明らかにし、さらに名詞修飾をする際の解釈特性にも焦点を当て、多面的なアプローチを行うことで、形容詞による名詞修飾に関わる一般原理を解明していく。 次に、本年度と次年度に明らかにしたことを統合する形で、「構文文法 (Construction Grammar)」の枠組みに立ってまとめていく。この理論は、形式と意味が常にペアを成す構文として存在しているという見方に立つ。これまでの研究結果から、名詞修飾に関して、修飾要素自体の形式の特性と名詞との意味上の修飾関係が相関しているにもかかわらず、その解釈に関しては、これらの特性からは独立しているような現象を観察する。したがって、これらをつなぎとめるものとして、構文という考え方が不可欠であることを論証する。 以上、このような一連の研究は、構文文法の枠組みに基づくことで、名詞修飾一般に関する広い現象を捉えることが可能となることが期待される。
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