2019 Fiscal Year Annual Research Report
超音波エラストグラフィを用いた骨格筋機能測定法の開発と臨床応用
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19J10699
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Research Institution | Yamagata Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
由利 拓真 山形県立保健医療大学, 保健医療学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 超音波エラストグラフィ / 脂肪浸潤 / 萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、高齢化社会の到来により、骨格筋の病態が寝たきりや要介護状態につながる転倒の原因として注目を集めている。予防および治療は、運動療法が有効であるとされているが、その効果は不明な点が多い。そこで、本研究の課題は、超音波エラストグラフィを用いた骨格筋機能測定法を開発し、運動療法によって機能改善が期待できる骨格筋の病態を解明することである。 本年度は、腱板修復術および運動療法を受けた腱板断裂例35例を研究対象として、術前と術後1年時に超音波エラストグラフィを用いて収縮能を測定した。その結果、脂肪浸潤が軽度(Goutallier 分類0-1)な症例は、収縮能が改善するのに対し、重度(Goutallier 分類2以上)な症例は、改善がほとんどみられないということが明らかとなった。また、腱板修復成功例(Sugaya分類Type I-II)と修復不十分例(Sugaya分類Type III)、再断裂例(Sugaya分類Type IV-V)の収縮能を比べ、腱板修復後の筋張力が収縮能に与える影響を調べた。その結果、Sugaya分類Type I-IIの修収縮能は改善する傾向にあるが、Sugaya分類Type IV-Vでは収縮能は改善しない、あるいは増悪する傾向にあった。このことから、収縮能の改善には十分な張力が必要であると考えられる。さらに、Sugaya分類Type IIIの収縮能はSugaya分類Type IV-V同様に改善しないあるいは増悪する傾向を示す一方で、少数ではあるが、収縮能が改善する症例も確認した。このことから、Sugaya分類Type IIIは、筋張力にばらつきがあることが示唆された。 以上のことから、脂肪浸潤がGoutallier 分類2以上に進行すると筋の収縮能は改善しないこと、筋収縮能の改善にはある程度の筋張力が必要であることを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、骨格筋への運動療法が脂肪浸潤がGoutallier分類2に進行する以前に行われるべきであること、および、十分な筋伸長を含めた介入が有効であることを示唆する知見を得た。従来、脂肪浸潤はMRI等を用いて脂肪浸潤の程度を評価し、改善の程度を検証してきた。しかし、本年度開発した超音波エラストグラフィを用いた骨格筋機能測定法は、従来MRI等では評価できなかった残存する筋線維の質を量的に評価可能であった。加えて、骨格筋の機能改善には十分な伸長が有効であることを示唆した。本年度は、骨格筋の機能について新たな知見が得られたことに加え、運動療法の適応基準とその介入法への示唆を得られたことから、研究計画を概ね順調に進展させていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果から、骨格筋への運動療法が脂肪浸潤がGoutallier分類2に進行する以前に行われるべきであること、および、十分な筋伸長を含めた介入が有効であることを示唆する知見を得た。しかし、骨格筋Subregionにおける萎縮と脂肪浸潤の病態の違いは、三次元的に異なる可能性があり、さらなる精査の必要がある。したがって、2-point Dixon Magnetic Resonance Imagingを用いて骨格筋Subregionにおける萎縮および脂肪浸潤の進行プロセスの違いを三次元的に詳細に解明することを目的として研究を進める。
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