2019 Fiscal Year Annual Research Report
Source and escape processes of Jupiter moon Io's atmosphere
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19J10742
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古賀 亮一 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2) (10889190)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 木星衛星 / イオ / 火山活動 / 大気 / 紫外線 / サブミリ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
木星衛星イオは太陽系で最も火山活動が活発な天体である。火山からの直接の噴出と表面の霜の昇華によって希薄な二酸化硫黄大気が形成されている。大気はやがて散逸し、酸素や硫黄原子がイオ軌道周辺に分布する。これらの原子はイオン化し、イオプラズマトーラスというドーナツ型の構造を形成する。これらの過程の理解を進めるため、イオの大気および散逸ガスに火山噴火がどの程度貢献しているかを調べるのが本研究の課題である。 イオ大気からの散逸によってイオ軌道周辺に形成される酸素原子は、木星磁気圏の電子との衝突や太陽光による共鳴散乱によって、地上では観測不可能な紫外線波長域で発光する。宇宙望遠鏡ひさき衛星による観測で可能となった酸素中性雲の時空間変動の連続監視によって、この微弱な発光の時空間変動を捉えた。 ALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)は高空間・波長分解能をもつ電波干渉計であり、イオ観測時ではビームサイズ0.32”×0.36”(イオは約1.0”),波長分解能0.21 km/sを達成している。本研究ではALMAのデータを使って電波天文の分野で使われている手法を惑星科学に応用した。 今年度の研究では主にALMA電波望遠鏡のアーカイブデータ解析によってイオの火山噴火ガスを検出し、ひさき衛星のデータ解析によって火山活動に伴うイオ散逸ガスの分布の変動を明らかにした。また、イオからの大気散逸過程を明らかにするために、ひさきの観測とモンテカルロシミュレーションの比較を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(イオ大気の酸素原子散逸過程の研究)ひさきの紫外線観測データを解析して、火山活動活発期のイオ軌道周辺の酸素原子(以下中性雲)の分布の変動を明らかにした。この結果を投稿論文で報告した。この結果は今後、ひさきチームでイオプラズマトーラスの研究を進める上で重要な材料となる。また、Johns Hopkins大学のTodd Smith博士と共同研究を行い、3次元モンテカルロモデルを用いて上記のひさき衛星観測から導出した酸素原子分布を再現する数値シミュレーションを行っている。コロナウイルスの影響で年度末に出張することはできず、詳細な結果を共有まではまだ至っていないが、火山活動が静穏な時期の平衡状態化においては観測を再現できるモデルのパラメータは絞れる見通しが立っている。 (ALMAのイオ大気の電波観測データ解析)ALMAのアーカイブデータの解析手法を身につけるため、名古屋大学へ頻繁に出張し、同大学の環境学研究科の平原靖大准教授と協同研究を行った。その結果、イオ大気の空間分布や速度分布、回転温度を明らかにし、高緯度東側と赤道西側にイオ火山からの直接噴出ガスの兆候を検出することができた。イオが陰に入る直前の高緯度東側の領域のスペクトル形状は、昇華大気を含んだ成分と火口から噴出されるガスによる成分との和で説明可能と判明した。また、赤道西側の領域の大気の回転励起温度を計4本のSO2のスペクトルの積分強度によって評価したところ、イオが陰に入る前は151±70 Kに対し、入った後は311±41 Kに上昇することが分かった。このことからイオが陰に入る前は低温の昇華大気と溶岩の蒸発によって発生した高温のガスの両方が存在していたが、陰に入った後、昇華大気は消失し、溶岩起源ガスのみが残されたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Johns Hopkins大学との数値シミュレーションの共同研究を継続し、ひさきの観測を再現できる火山活動が静穏な時期の中性雲のモデルのパラメータを拘束する。この結果を投稿論文として発表できるようにする。また、火山活動が活発な時期の中性雲においても同様の研究を行い、イオからのガスの散逸量の変化を評価できるようにする。 イオの大気分布は、表層のSO2霜と火山の分布に依存するため、イオ全球の大気構造を把握することが重要である。ALMAによって木星の陰周辺にイオがいるとき(木星側の面)の大気がすでに観測されているため、これまでのSO2に加え SO及び気体のNaCl, KClスペクトルの強度分布を導出する。また、イオが木星前を通過するとき(反木星側の面)の大気分布のALMA観測プロポーザルを新たに申請する。コロナウイルスの影響で申請の締め切りが来年4月に延期されたため、今年度はその申請の準備を行う。
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[Presentation] ひさき及びALMAの観測で明らかになった、木星衛星イオの火山活動が大気及びイオトーラスに与える影響2021
Author(s)
古賀亮一,鈴木達也,平原靖大,土屋史紀, 坂野井健, 鍵谷将人, 北元, 木村智樹, 吉岡和夫, 吉川一朗, 村上豪, 山崎敦
Organizer
惑星圏研究会
Invited
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[Presentation] olcanic change of the distribution of Io’s neutral oxygen cloud observed by Hisaki2020
Author(s)
R. Koga, F. Tsuchiya, M. Kagitani, T. Sakanoi, T. Kimura, I. Yoshikawa, K. Yoshioka, G. Murakami, A. Yamazaki, H. T. Smith, F. Bagenal
Organizer
Japan Geoscience Union Meeting 2019
Int'l Joint Research
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[Presentation] Spatial distribution of Io's neutral oxygen cloud during a volcanically quiet and active periods in 2014-20152020
Author(s)
R. Koga, F. Tsuchiya, M. Kagitani, T. Sakanoi, T. Kimura, K. Yoshioka, I. Yoshikawa, G. Murakami, A. Yamazaki, H. T. Smith, F. Bagenal
Organizer
Conference on Magnetospheres of the Outer Planets 2019
Int'l Joint Research
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[Presentation] Enhancement of the oxygen atoms escape from Io’s atmosphere and relation to the volcanism and Io plasma torus2020
Author(s)
R. Koga, F. Tsuchiya, M. Kagitani, T. Sakanoi, T. Kimura, K. Yoshioka, I. Yoshikawa, G. Murakami, A. Yamazaki, H. T. Smith, F. Bagenal
Organizer
AGU Fall meeting 2020
Int'l Joint Research