2019 Fiscal Year Annual Research Report
疎なグラフに対する効率良い部分構造列挙アルゴリズムの研究
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19J10761
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
栗田 和宏 北海道大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 部分構造列挙 / ならし多項式時間 / 疎性 / 最大クリークサイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,疎なグラフに対する列挙問題の計算量を限界まで小さくすることを目指す.その成果として,以下の結果が得られた. (1)近傍のみに影響を与えるグラフの部分構造に対する効率良い列挙アルゴリズムを開発した.具体的には,弦二部誘導部分グラフと,独立点集合,そして誘導木に対し,グラフが疎な場合にならし定数時間,つまり,解1つあたり定数時間で列挙するアルゴリズムを与えた.特に,独立点集合と誘導木に対して,グラフが定数サイズのクリークしか持たないならば,ならし定数時間で列挙可能であることを示した.列挙アルゴリズム分野では縮退数という値が小さいグラフに対し,効率良い列挙を実現するアルゴリズムが多く開発されてきた.最大のクリークサイズは縮退数以下であるため,独立点集合と誘導木が,縮退数が大きなグラフに対しても,効率良く列挙可能であることを明らかにした. (2)極大性や極小性の制約を持つ構造に対し,効率良い列挙アルゴリズムを開発した.特に,極大クリークと極小多分割カットに対し,解1つあたり多項式時間,つまりならし多項式時間を達成するアルゴリズムを開発した.極大性や極小性を持つ解は全ての解に対して,解の個数が指数的に小さくなることが期待できるため,このようなアルゴリズムの開発は実用上でも重要であると考える. (3)これまでの研究成果で開発した列挙アルゴリズムに対して,高速な実装を与える.これまでの研究により,誘導マッチングと,支配集合,内周制約部分グラフに対する効率良い列挙アルゴリズムを与えた.そこで,それらのアルゴリズムの実装を行い,それぞれの実用性の確認を行なった.特に,誘導マッチングと内周制約部分グラフに対するアルゴリズムは単純な列挙アルゴリズムと比較し,数十倍高速であることを確認した. (4)上記の結果をまとめ,学位論文を執筆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況は以下の通り概ね順調に進展している. 研究目的であげた. (1)に関しては順調に進展している.当初予期していなかった最大のクリークサイズという新たな疎性パラメータの発見ができたことは今後の効率良い列挙アルゴリズムの開発にとって重要な知見だと考える. (2)に関しては,いくつかの部分構造に対し,極大性や極小性を持つ解に対する効率良い列挙は実現できている.特に極小多分割カットについては,現在のアルゴリズムは一般のグラフに対する効率良い列挙アルゴリズムになっているため,今後は疎なグラフにより特化したアルゴリズムの開発を行う. (3)に関しては,開発したアルゴリズムそのものの実装は行なっている.今後は,これらのアルゴリズムを基に枝刈り等の探索技術との組み合わせを行い,より実用的な列挙アルゴリズムの開発を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的(1)については順調に進んでいるが,独立点集合と誘導木の結果についてはまだ国内会議や出版のない国際会議でしか発表していない.今後の方策の一つはこれらの結果を論文としてまとめることである.また,最大クリークサイズと縮退数によって列挙がどの程度困難になるのかを明確にするため,縮退数が小さいグラフに対し,効率良い列挙が知られている問題が最大クリークでも効率良く列挙が可能かを調査する. 研究目的(2)については,当初予期していなかった極小な多分割カットという構造に対して,効率良い列挙は実現できた.そして,予定していた内周の制約を持つ極大部分グラフの列挙が一般のグラフに対しては今までの手法を容易に拡張することができなかった.そのため,今後は内周がとても大きな場合やとても小さな場合に制約した問題に対し,効率良い列挙が可能かを明らかにする. 研究目的(3)の枝刈り等の探索と組み合わせた列挙アルゴリズムの開発について,これまでは今まで開発したアルゴリズムそのものの実装しか行っていない.今後は列挙した構造をどのように利用するかも含め,有用な解を効率良く見つけ出す実用的な列挙アルゴリズムの開発を行う.
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Research Products
(10 results)