2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J10793
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河内 元希 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 有機触媒 / 不斉アルドール反応 / 天然物合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンホテリシンBは重要な抗真菌薬であるが、重篤な副作用を引き起こす場合があることから、より副作用の少ない誘導体の合成が強く望まれている。一方で、アンホテリシンBのポリオール部位に関しては、天然物からの誘導化が難しいことから構造活性相関研究はあまり行われていない。そのため、有機合成によるポリオール由来の誘導体の供給が求められている。そこで、本年度は当研究室が開発した有機触媒を用いた不斉アルドール反応、並びに1,3-syn-ジオール構築法を駆使したポリオール部位の効率的な合成法の確立、その後の各種フラグメントのカップリングおよび官能基変換によるアンホテリシンBのポリオール部位の合成法の確立を目指した。 具体的には、所属する研究室により開発された有機触媒を用いた不斉アルドール反応、並びにヘミアセタール化と続くオキシマイケル反応を利用した1,3-syn-ジオール骨格の構築法、あるいはHenry反応と異性化を利用した1,3-syn-ジオールの構築法を駆使することで、3種のフラグメントの合成法を確立した。その後は、それぞれのフラグメントのカップリング反応及び各種変換反応を行い、ポリオール中間体の合成を大きく進展させた。続くポリエンユニットの導入に際し、問題点が生じていることからそれらの解決は全合成の達成に向けては大きな課題である。また、この合成手法では、複数の不斉点の立体構造は有機触媒反応により決定されているため、アンホテリシンBの全合成達成がなされた暁には、ポリオール部位に関する複数の誘導体が合成できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、アンホテリシンBのポリオール部位の合成法の確立に注力した。所属する研究室により開発された有機触媒を用いた不斉アルドール反応と還元反応をワンポットで行った後、3工程の変換反応を経て一つ目のフラグメントの合成を行った。また、不斉アルドール反応と続くHWE反応をワンポットで行った後、ビスマス触媒触媒を用いたヘミアセタール化並びに分子内オキシマイケル反応を利用する1,3-不斉誘起により、2つ目のフラグメントの合成を行った。一方で、不斉アルドール反応と続くHenry反応により1,3-ジオールをジアステレオマー混合物として合成した後、9工程の変換反応と続く異性化により3つ目のフラグメントの合成を行った。3種のフラグメントの合成法が確立できたため、それらのカップリング及び各種変換反応によりポリオール部位の合成法の確立を目指した。向山アルドール反応による1つ目のフラグメントと2つ目のフラグメントのカップリングは高収率、かつ高立体選択的に進行した。続く保護基の変換や六員環アセタールの形成、クライゼン縮合等5工程の変換を行った後、3つ目のフラグメントとのHWE反応によるカップリング反応は良好に進行した。不飽和ケトン部位のジアステレオ選択的還元及びヒドロホウ素化を利用した三重結合の変換反応といった7工程の官能基変換を行い、ポリオール部位の合成法を確立した。上記の結果より、本年度の当初の予定であるポリオール部位の合成法の確立は達成できたと考えられる。その後、ポリエンユニットの導入に向けてジエン部位を導入したものの、続く官能基変換には成功していない為、今後検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに合成したポリオール部位に対し、ポリエン部位の導入及びマクロラクトン化、グリコシル化等を含めた各種変換反応を行いアンホテリシンBの全合成を試みる予定である。ポリオールユニットに対し、HWE反応を利用しスタニルジエンを導入したが、その後の変換反応は成功してはいない。その原因としてジエンユニット導入後に分子内の水酸基とカルボニル基が容易に反応することが挙げられることから、先んじて水酸基を酸化してエステルへと変換しておくことを考えている。一方で、その変換反応が進行しなかった場合、水酸基は保護した状態でカルボニル基の還元及び保護を行うことを考慮している。いずれかの変換反応が望み通り進行した際には、対応するポリエンユニットに関して合成を行った後、Stilleカップリング及び鈴木宮浦カップリングにより順次二重結合を伸長し、ヘプタエンユニットを導入する。その後は、椎名マクロラクトン化による38員環の構築とグリコシル化、並びに各種保護基の脱保護を行うことで、アンホテリシンBの全合成を目指す。マクロラクトン化が困難であると判断される場合、エステル化、及び分子内HWE反応による38員環の構築を試みる。アンホテリシンBの全合成が達成できた際には、すでに合成法を確立した3つのポリオールユニットに関し、不斉アルドール反応に用いる触媒を変えることで各種異性体の合成を行い、それぞれのフラグメントに関してカップリング反応及び各種変換反応を進めることでアンホテリシンBのポリオール部位に関する各種誘導体の合成ができると考えられることから、構造活性相関研究に応用し、天然体と比較し抗真菌活性を有しながらも人体に対する副作用の少ない誘導体の探索を目指す。
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