2019 Fiscal Year Annual Research Report
秒の再定義への貢献を目指したYb/Sr光格子時計の周波数比計測に関する研究
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19J10824
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
久井 裕介 横浜国立大学, 理工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 光格子時計 / 秒の再定義 / 時計遷移周波数比 / 原子時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
「研究の目的」と「本年度の研究実施計画」に記載した通り、令和元年度はSr光格子時計の不確かさの低減を主な目標としていた。本年度の成果としては、2014年に我々のグループが報告した値よりも小さな不確かさをpreliminaryな値であるが達成した。なお、Yb光格子時計については[T. Kobayashi, et al., "Uncertainty Evaluation of an 171 Yb Optical Lattice Clock at NMIJ," IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 65, 2449-2458 (2018)]にて不確かさを報告しており、最終的にYb/Sr時計遷移周波数比の不確かさも小さくなることが確実である。Yb/Sr時計遷移周波数比の値については、こちらもpreliminaryな値であるが他のいくつかの研究機関による先行研究で報告された値と不確かさの範囲内で一致する結果が得られた。我々のグループが2014年に報告した値は、例えば[J. Grotti, et al., "Geodesy and metrology with a transportable optical clock," Nat. Phys. 14, 437-411(2018)]に示されているように他の研究機関の報告値と一致していないという問題があった。上記のようにより小さい不確かさで他の研究機関と一致するYb/Sr周波数比の値を報告することは、光格子時計による秒の再定義への動きを一歩前進させる重要な役割を担うものであるといえる。現在は論文にて報告するために最終的な系統不確かさの評価を進めており、近々論文を提出する予定である。また、現状のYb/Sr時計遷移周波数比の値と不確かさについて2020年5月に開かれるCLEOという国際会議にてオーラルプレゼンテーションでアクセプトされ、発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で示したように、当初令和元年度の目標としていた「Sr光格子時計の不確かさの低減」を達成したことからおおむね順調に進展しているといえる。また、「研究の目的」に示した「Sr光格子時計の長期運転」についても本年度進捗があった。[T. Kobayashi, et al., "A relocking scheme for optical phase locking using a digital circuit with an electrical delay line," Rev. Sci. Instrum. 90, 103002 (2019)]にて我々のグループが報告した周波数安定化の自動復帰システムを改良したシステムの開発を今年度行い、ある程度の進展があった。また、現在光格子時計に使われているレーザーを外乱に強いものに改良していくことも進めており、一部のレーザーについては作成済みである。上記2つの導入については今年度進めていく予定である。令和元年度の研究の進展として不十分な点としては、Yb/Sr時計遷移周波数比の測定値と不確かさ評価について論文で発表するところまで至らなかったことである。この点に関しては現在準備を進めているところであり、確実に今年度中に論文を提出できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はYb/Sr時計遷移周波数比の測定に関する論文の発表に加えて、「研究の目的」の②光格子時計による水素メーザーの安定度の評価と③Sr光格子時計の長期運転を進めていきたいと考えている。②については、Sr光格子時計とYb光格子時計を1か月以上の長期間にわたって動かし続け、Yb/Sr時計遷移周波数比の測定とそれぞれの光格子時計の絶対周波数計測を同時に行うことによって、水素メーザーをベースに生成されるローカルな時系であるUTC(NMIJ)の変動をモニターするということを考えている。その際、2つの光格子時計の絶対周波数の同時計測には我々のグループが2018年に発表した「8ブランチ光周波数コム」[Y. Hisai, et al., "Development of 8-branch Er:fiber frequency comb for Sr and Yb optical lattice clocks," Opt. Express 27, 6404-6414 (2019)]を用いる。さらに、長期間にわたる絶対周波数計測の結果を国際度量衡局(BIPM)に報告し、実際に私が担当しているSr光格子時計が国際原子時(TAI)に貢献する、すなわち世界の時間を生成する役割の一端を担うことを目標としている。この目標の達成を現実的なものとするために、③の研究も進めていく。具体的には光格子時計に用いているレーザーの制御が外乱によって外れることのないようレーザーの堅牢化を進めることと、FPGAを用いたレーザーの周波数制御の自動復帰システムの改良を主に想定している。これらの開発は令和元年度の段階で一部進んでおり、次年度はこれらを完成させたのち実際の光格子時計の運転のために導入することを目標としている。
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Research Products
(1 results)