2019 Fiscal Year Annual Research Report
暗室下における化合物半導体の変形挙動評価と転位物性の解明
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19J10851
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大島 優 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 転位 / 化合物半導体 / 結晶塑性 / 光学特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下2点の項目について注力した. 1.光環境が硫化亜鉛結晶の変形特性に及ぼす影響を定量化 化合物半導体の1つである硫化亜鉛結晶は,暗室下で延性的,光環境下で脆性的な性質を示す.また,その降伏応力・変形応力は光照射により増加することから,転位の運動性が光照射によって大きく低下すると考えられる.しかしながら,光が転位の運動性をどの程度低下させるかは不明であった.そこで,本研究では硫化亜鉛結晶について光環境制御下における荷重一定のクリープ変形試験を実施し,光が転位の運動性に及ぼす影響について定量的に評価することを目指した.暗室下において定常変形時に光を照射すると,塑性変形の進行は直ちに停止した.この際のひずみ速度変化を抽出することによって,光照射による転位の運動性の低下を数値として算出することに成功した. 2.転位の導入が硫化亜鉛結晶の光学特性に及ぼす影響を評価 暗室下において大変形を施すことで,硫化亜鉛結晶中に多数の転位を導入することが可能である.硫化亜鉛結晶中の転位はバルクと異なる特異なバンド構造を有するために,転位の導入により結晶の基礎物性が大きく変化する可能性がある.そこで本年度は,転位の導入が硫化亜鉛結晶の発光特性に及ぼす影響について調査を行った.発光のスペクトル解析により,変形により転位が導入された結晶において,未変形結晶とは異なる発光が確認された.その起源は,転位が,その特異な電子構造のためにキャリアと相互作用するためと推察される.転位の導入により,半導体結晶に新たな光学特性を付与できる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,光環境が硫化亜鉛結晶の変形特性に及ぼす影響について定量評価に成功した.また,塑性変形により導入された転位により,硫化亜鉛結晶の基礎物性が変化することが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,光環境と転位の運動性および転位と光学特性との関連について調査を実施してきた.一方で,転位の構造がこれらに及ぼす影響については未だ不明である.そこで今後は,変形後の結晶について,電子顕微鏡を用いた転位組織の観察を行い,変形試験時の条件が転位組織に及ぼす影響,および,転位組織が結晶の物性に及ぼす影響について調査していく予定である.
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Research Products
(4 results)