2019 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋分泌因子を介した運動依存的な皮膚機能制御機構の解明
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19J10894
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
佐藤 友里 東洋大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 骨格筋 / マイオカイン / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、トレッドミルを用いたマウス強制走行実験を行い、運動によって真皮組織において運動依存的にコラーゲン遺伝子の発現が上昇することを確認した。次に、運動依存的なコラーゲン遺伝子発現上昇がマイオカインを介しているかを検証した。真皮線維芽細胞にCtrl-CM, EPS-CMをそれぞれ添加し、24時間培養し、Col1a1遺伝子の発現を調べたところ、動物走行モデルと同様に上昇しており、培養上清中に放出されるコラーゲンもEPS-CMの添加により増加することが明らかとなった。これらのことから、真皮組織における運動依存的なコラーゲン発現分泌の上昇にはマイオカインが関与している可能性が示された。 次に、真皮組織における運動依存的なコラーゲン発現分泌の上昇に関わるマイオカインの同定を試みた。これまでの研究において、すでに運動抑制性マイオカインであることが同定されている CXCL10について、そのレセプターであるCXCR3の発現が確認された。EPS-CMにおいてはCXCL10量が有意に減少していることが明らかとなっているため、CXCR3アンタゴニストを真皮線維芽細胞に添加し、コラーゲン分泌量の変化を調べたところ、アンタゴニスト添加によりコラーゲン分泌が上昇することが明らかとなった。すなわち、骨格筋収縮によって骨格筋近傍のCXCL10濃度が減少し、真皮線維芽細胞のCXCR3シグナルを減弱した結果、コラーゲン分泌が上昇する可能性が示された。 また、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により学会発表を実施することができなかったため、昨年度からの進展はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で学会発表や論文での発表が不可能であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、主に運動依存的なコラーゲン分泌上昇に関与しているマイオカインについて、さらに詳細な検討を実施する予定である。本年度の研究によりCXCR3を介したシグナル伝達経路の関与によりコラーゲン分泌が制御されていることが示されたため、そのリガンドであるCXCL10の関与について、より詳細な調査を実施する。まず、CXCR3のアゴニストを添加した際のコラーゲン分泌変化について検討を実施する。次に、EPS-CMに、EPSにより減少したCXCL10をRecombinant CXCL10を補償的に添加することで、CXCL10濃度のみをCtrl-CMと同一にして真皮線維芽細胞に添加することにより、コラーゲン分泌量の上昇がみられなくなるかどうかについて検証する。さらに、発現が確認された他のマイオカインレセプターに関してもアンタゴニストやアゴニスト、リコンビナントタンパク質を用いて、運動依存的なコラーゲン分泌制御に関与しているかを検討する。また、マイオカイン依存的な真皮線維芽細胞の遺伝子発現変動を網羅的に明らかにすることを目的として、Ctrl-CM及びEPS-CMを添加した真皮線維芽細胞のトランスクリプトーム解析を実施する予定である。以上の研究により、運動依存的な皮膚機能制御におけるマイオカインの役割を明らかにしたい。
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