2019 Fiscal Year Annual Research Report
諮問機関の比較政治制度分析:審議会と連邦諮問委員会の比較研究
Project/Area Number |
19J10895
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 峻 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 審議会 / 政官関係 / 官僚制 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、審議会についてデータ収集、分析、論文執筆を行い「官僚制への統制手段としての審議会」としてまとめた。しばしば官僚の隠れ蓑に過ぎないと指摘される審議会であるが、設計主体である政権党が官僚に諮問を強制している側面が見落とされていることをゲーム論によって指摘した上で、(1)政権党と官僚制の政策選好の乖離が大きい、(2)審議会の権威が小さい、(3)審議会と政権党の政策選好の乖離が小さい、(4)政権党が現状の政策に不満を持っているという四つの場合により多くの諮問を強制する旨の法令が定められていることを計量分析によって実証した。 第二に、審議会を分析するための理論的視角として政官関係が重要となるが、そのために必要不可欠な変数である「政官の政策選好の乖離」の程度を量的に推定する方法を考察し「乖離した日本の政官関係」としてまとめた。政策選好を推定するために用いられる方法は主にサーベイだが、日本では近年行われておらず他の方法が必要となる。本研究は政官の国会での発言に注目し、量的テキスト分析を用いて発言の背後にある政策選好を推定した。指標は(1)定性研究の知見と整合的、(2)既存の指標と高い相関、(3)重要な仮説の検証に利用可能といった妥当性を備えている。 第三に、審議会を含む合議体全体に視野を広げ近年の動向を分析する共同研究に参加し、「政策会議は統合をもたらすか」としてまとめた。近年の合議体の設置状況をデータとして収集し、審議会とは性質の異なるいわゆる政策会議と呼ばれる組織が多用されていることが確認した。有識者が委員となる審議会と異なり、政策会議は首相や閣僚が委員の中心となるという特徴を持ち、よりトップダウンに行政を統制しようとする意図がある。しかし同時に、トップダウンの政策会議が乱立しすぎると政策会議同士の調整が困難になり、政治から行政への委任体系が混乱する恐れがあることを指摘した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一に、主たる研究課題である審議会について論文の執筆を行い、日本政治学会で報告するとともに、同会の雑誌である『年報政治学』に投稿し、査読を経て掲載が決定した。 第二に、より発展的な研究を行う上で必要不可欠となる変数の推定方法を考察し、翌年度の研究の基盤を築くことができた。本研究は、翌年度の日本行政学会で報告することが決定している。 第三に、共同研究に参加することによって、本研究課題をより広い文脈に位置付ける方針を得ることができた。具体的には、審議会のみに注目し分析をするのではなく、審議会も含めた行政組織全体の中で、他の行政組織との比較によって審議会の位置付けを分析する必要があることが明らかとなり、翌年度の研究方針がより明確になった。なお、本研究は『季刊行政管理研究』に掲載されている。 以上の通り、主たる研究が公表に至ったこと、翌年度の研究の基盤を築くことができたこと、共同研究を通してより発展的な研究の見通しが立ったことから、当初の計画以上に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
第一に、今年度取り組んだ第二の研究(「乖離した日本の政官関係」)の公表を目指す。報告が決定している日本行政学会でコメントを受けたあと、それをもとに修正を加え、査読誌に投稿する。 第二に、今年度の共同研究を受けて、より包括的なデータセットを構築する必要が生じた。審議会に限らず行政組織全般のデータを収集し、比較研究を行なってゆく。
|