2020 Fiscal Year Annual Research Report
褐藻類における寒流域での単為生殖系統の進化メカニズムとその進化的意義
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19J10967
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
星野 雅和 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 褐藻 / 単為生殖 / 一塩基多型 / MIG-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、褐藻カヤモノリ(Scytosiphon lomentaria)を材料として、単為生殖のみで繁殖する単為生殖系統の起源・進化プロセスの解明を目的とした。 カヤモノリは熱帯域を除いて、世界中の沿岸(潮間帯)に分布する。特別研究員は、全ゲノムから得た500遺伝子座ほどの一塩基多型情報を用いた系統解析と集団性比の調査から、カヤモノリでは、有性系統は日本列島(とおそらくその周辺)にのみ分布するのに対し、単為生殖系統は世界中(日本列島、カナダ、アルゼンチン、ノルウェー、アイルランド)に広く分布することを示した。日本列島では、有性系統が暖流(黒潮・対馬海流)の影響の強い温暖な海域に分布するのに対し、単為生殖系統が寒流親潮の影響の強い寒冷な海域に分布しており、両系統が異なるニッチを持つことが分かった。 系統解析はカヤモノリの単為生殖系統は、少なくとも2つの系統からなることを示した。陸上植物や動物では、種間交雑が単為生殖系統の主要な起源であることが指摘されているが、本研究解析結果は、単為生殖系統が種間交雑由来であることを支持しなかった。具体的な起源は解明できなかったものの、2つの単為生殖系統では、オス配偶子を誘引する性フェロモンの生産能が並行して抑制(喪失)されていることが確認され、効率的な有性生殖に不可欠な形質が何らかの要因で喪失したことが、単為生殖系統の直接的な起源となった、という仮説を提唱するに至った。 本研究で得られた興味深い発見の一つに、有性系統との交雑を経験したと思われる単為生殖系統の存在が挙げられる。有性生殖を欠く系統は、組換えによる有害変異の除去や、遺伝的多様性の保持ができないため、進化の袋小路(デットエンド)に突入すると考えられている。本研究の結果は、単為生殖系統が有性系統との交雑を通して進化の袋小路から脱出する可能性を示唆している。
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Research Progress Status |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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