2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J10976
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮西 孝一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 量子符号化 / 動的確偏極(DNP) / 光励起三重項 / 量子科学計算 / 分子動力学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
光励起三重項状態の電子スピンを用いるTriplet-DNP技術によって、室温・低磁場下で高偏極化された核スピンを用いた量子符号化実験を行い、国内で学会発表と、学術誌Quantum Science and Technologyへの論文投稿を行った。また、本研究で用いた高偏極試料の高磁場溶解装置の構築に関する実験も行いその成果もまとめられ、論文を学術誌Journal of Magnetic Resonanceに投稿した(Cover art)。 以下では、量子符号化実験とその理論計算プログラム作成の研究実績について述べる。 これまでの研究から、Triplet-DNPを行うためにペンタセンをドープするには、ベンゼン環を有する分子である必要があると考えられており、まずはTriplet-DNPが可能かつ量子符号化が可能な分子の探索を行った。その結果、パラクロロ安息香酸を用いることで、室温・0.4T下で1740倍の信号強度が可能で、量子符号化を行うことにより縦緩和時間に比べて約2.5秒の長寿命化が可能であることを確認し、Triplet-DNPによって高偏極化された核スピンの長寿命化にも成功した。また、βシクロデキストリンへの包摂をによるリガンド/レセプター反応の観測を行った。その結果、量子符号化状態を用いることで高感度に反応の可視化を行えることを示し、量子符号化の化学反応のプローブとしての有用性を示した。次に、符号化状態の緩和時間を高精度に見積もるために、量子化学計算・分子動力学計算を用いて、緩和に寄与する分子内相互作用・分子間相互作用を計算するプログラムを作成している。すでに、一部の分子に対しては十分な精度で緩和時間の計算が可能であることを確かめた。今年度中に、より多くの分子の緩和時間の計算と、リガンド/レセプター反応による緩和時間の変化の計算を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定していた核スピン緩和現象の数値計算に関しては、分子動力学計算を用いることで縦緩和時間に関しては多くの分子で良い精度で一致する結果を得ることができた。量子符号化状態に対しては、精度よく計算できる分子と、そうでない分子が存在している。研究目標の一つである、量子符号化を用いた高感度NMRの実証実験は、量子符号化を用いたリガンドレセプター結合の高感化が実証できている。現在は数値計算プログラムを使ってこ実証実験の理論計算プログラムの作成を進めており、当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度内に、数値計算プログラムを用いてリガンドレセプター結合の実験の数値計算との一致を試みる予定である。具体的には、これまで溶媒中の溶質分子と溶媒分子との相互作用を分子動力学計算を用いて高い精度で計算したプログラム用いて、溶質分子(リガンド)とレセプター分子の相互作用を計算する。続いて、結合状態と非結合状態のそれぞれで縦緩和時間と量子符号化状態の緩和時間を計算し、実証実験との比較を行う。
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Research Products
(4 results)