2019 Fiscal Year Annual Research Report
天然物の立体異性体を用いた標的選択性及び生物活性チューニング法の開発
Project/Area Number |
19J11001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 謙吾 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ジャスモン酸 / コロナチン / 立体異性体 / 標的選択性チューニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物ホルモン ジャスモノイルイソロイシン(JA-Ile)の構造ミミック天然物コロナチン(COR)の立体異性体を利用して、その生物活性をチューニングすることを目的としている。JA-Ileは植物の病原菌及び害虫に対する防御応答や二次代謝産物の生合成誘導など有用な生物活性を示す一方、成長抑制のような副作用も同時に誘導される。これは、JA-Ileの受容体であるCOI1-JAZサブタイプが複数存在し、JA-IleとCORの絶妙な三次元構造が全てのサブタイプに結合するためだと考えられた。そこで、CORの立体構造を少し歪ませた立体異性体を用いて、受容体サブタイプ選択性をチューニングすることで、成長抑制のような副作用を伴わずに防御応答や二次代謝産物の生合成を誘導する新たなリガンドを開発することを目的として研究を行った。 本年度は、CORの立体異性体の合成ルート中で、収率の安定しないステップを改良することで、合成的供給の確立が出来た。今後の植物個体を用いたアッセイを見据えて、さらなる合成ルートの改良を検討する予定である。またこれら立体異性体を用いて、蛍光異方性による各COI1-JAZサブタイプに対する親和性評価を行った。その結果、CORと同様に全てのCOI1-JAZサブタイプに結合する立体異性体、どのサブタイプにも結合しない立体異性体が存在する一方で、特定のサブタイプ選択的に結合する立体異性体も複数見出された。今後は、サブタイプ選択的な立体異性体の植物個体を用いたアッセイを行う予定である。また、これら立体異性体の結合親和性強化のため、ドッキングスタディーを用いた誘導体化の検討も行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、化学合成したコロナチン立体異性体ライブラリを用いて、シロイヌナズナ、イネ、トマトのCOI1-JAZ受容体サブタイプライブラリを用いた結合親和性評価を行った。その結果、各系において、高いサブタイプ選択性を示すことを示唆するデータを得た。現在は、これらを植物体に投与し、表現型観察、並びに遺伝子発現解析を行っている。研究は期待通り進行しているが、今後の表現型いかんによっては、長時間を要する可能性も否定は出来ない。引き続き、検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、コロナチンの立体異性体がCOI1-JAZサブタイプ選択的に結合することを見出している。今後は、COI1-JAZサブタイプ選択的な立体異性体の植物体での効果を検証する。双子葉植物のモデル植物であるシロイヌナズナ及び、単子葉植物のモデル植物であるイネを用いて表現型の解析を行う。特に、成長抑制活性試験、病原菌耐性試験やファイトアレキシンをはじめとする二次代謝産物の定量などについて解析していく予定である。また、立体異性体をリード化合物として、より強力なサブタイプ選択的なリガンドの開発も行う。その設計指針は、ドッキングスタディーを用いて行う。
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