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2019 Fiscal Year Annual Research Report

地衣化の起源に着目した菌類-藻類間相互作用機構の解明に関する研究

Research Project

Project/Area Number 19J11217
Research InstitutionUniversity of Tsukuba

Principal Investigator

升本 宙  筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2019-04-25 – 2021-03-31
Keywords地衣共生 / 共生藻
Outline of Annual Research Achievements

本年度は主に野外で多様な地衣類の採集を行い,地衣体を構成する地衣化菌と共生藻の培養株の確立,およびそれらの同定を行った。その結果,地衣化菌として担子菌門のMulticlavula属やLichenomphalia属などの培養株を確立することができ,共生藻としてはCoccomyxa属やElliptochloris属などの培養株を確立することができた。また,採集した地衣類のうち,Multiclavulaに似た子実体を形成する地衣化菌を系統解析で詳しく調べたところ,担子菌門のアンズタケ目に位置する新規系統の菌類であることが判明したため,現在,新属相当の菌類として記載論文の投稿を準備している。
また本年度は,地衣化菌Multiclavula mucidaと共生藻Elliptochloris subsphaericaの共生系において,地衣共生が誘導される共培養条件の検討を実施した。その結果,コーンミール寒天(CMA)培地を栄養源として用いた場合に,M. mucidaの菌糸がE. subsphaericaの細胞に巻きついて地衣体を形成する現象が確認された。形成された地衣体を電子顕微鏡で観察したところ,野外で見られる地衣体に類似する構造をしていたことから,実験室条件下で地衣共生を誘導できたと考えられる。また,栄養源としてCMA培地を用いた場合に,共生藻について単独培養時と地衣共生誘導時を比較したところ,単独培養時は葉緑体が萎縮して油球が目立っていたのに対し,地衣共生誘導時には葉緑体が大きくなり,油球が小さく目立たなくなる結果となった。この結果は共生藻が地衣化菌と地衣化することによって生理的に変化したことを示しており,Multiclavula-Elliptochloris共生系は地衣共生時の菌類-藻類間の栄養授受を調査する上でのモデルとなる系であると考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度の主目的は野外で様々な地衣類を採集,同定,分離培養し,実験室内で菌類-藻類間相互作用機構の解明に取り組むのに適した地衣共生系を探し出すことであった。野外での採集と分離培養の結果,担子菌門の地衣類を中心とした様々な地衣化菌と共生藻の培養株を確立することができた。一般に地衣化菌は生育が遅く培養が困難であるものが多いが,その中でも,地衣化菌Multiclavula mucida(担子菌門アンズタケ目)とその共生藻Elliptochloris subsphaerica(緑藻トレボウクシア藻綱)の地衣共生系は,それぞれの単独培養下での生育が比較的良好であった。そこで,このMulticlavula-Elliptochloris共生系を対象に,実験内での地衣共生を誘導するための二員培養を行なったところ,栄養源としてコーンミール寒天培地を用いた条件において,地衣共生の誘導が認められた。また,同一の条件での追試験も行なったところ,やはり地衣共生の誘導が認められたことから,本共生系は実験室条件下での地衣共生の誘導が再現可能な地衣共生系であると考えられた。さらに,本共生系では,共生藻の生理的な状態(葉緑体と油球の発達度合い)が,単独培養時と地衣共生誘導時とで顕著に変化することがわかったことから,地衣共生時に共生藻と地衣化菌との間で栄養授受等の何らかの相互作用が生じることで,共生藻の生理的な変化につながったと考えられる。今後,この地衣共生時の共生藻の生理的な変化を解明することは,地衣共生機構の解明にもつながる取り組みになることが予想されたため,本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。

Strategy for Future Research Activity

翌年度の研究の推進方策としては,引き続き野外で地衣類を採集して,地衣化菌と共生藻の培養株を確立するとともに,前年度に実験室条件下での地衣共生の誘導に成功したMulticlavula-Elliptochloris共生系以外の地衣共生系についても,同様に地衣共生の誘導が可能であるかどうか,様々な条件下での共培養実験を継続して行う予定である。また,既に地衣共生の誘導に成功したMulticlavula-Elliptochloris共生系については,地衣化菌Multicalvula mucidaと共生藻Elliptochloris subsphaericaともに両ゲノム情報が未だに得られておらず,直ちに地衣共生時の遺伝子発現等の解析を行うことが難しい状況にある。そこで,両種の高分子DNAをそれぞれ抽出し,ハイスループットシーケンサーを使用してロングリードとショートリードを取得することで,ハイブリッドアセンブルを行い,両種の高品質なドラフトゲノムを取得することを計画している。そして,菌類ゲノムの機能アノテーションに使用されているfunannotateというパイプラインを使用し,タンパク質コード配列を推定するとともに,interproscan等のタンパク質配列解析サービスを利用して,アノテーション済みのゲノムを取得する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2019

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Lichenomphalia meridionalis (Hygrophoraceae, lichenized basidiomycota) new to Asia2019

    • Author(s)
      Hiroshi Masumoto, Ohmura Yoshito, Yousuke Degawa
    • Journal Title

      Opuscula Philolichenum

      Volume: 18 Pages: 379-389

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] Multiclavula mucidaと緑藻Elliptochloris subsphaericaの共培養条件の検討2019

    • Author(s)
      升本宙,出川洋介
    • Organizer
      日本菌学会第63回大会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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