2019 Fiscal Year Annual Research Report
易活性化型変異を導入した人工Gタンパク質共役型受容体の創製と応用
Project/Area Number |
19J11256
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川上 耕季 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | GPCR / Gタンパク質 / 恒常活性 / NanoBiT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、これまでに同定している多数のGPCRの共通に活性化させる変異(BW:3.43Q)を、GPCR解析ツールとして応用し、未解明のGPCR研究の課題に取り組む。 その前段階として、より多くのGPCRを活性化させる変異の適用拡大を図った。 まず、我々がこれまでに解析してきた多数のGPCRのシグナル解析の結果に加え、ClassAに属するGPCRの配列アライメント、既報のGPCR三次元構造の情報を組み合わせることで、GPCR活性化、Gタンパク質共役に関わるアミノ酸位置とアミノ酸の性質の網羅的同定と、活性化、Gタンパク質共役を予測する配列アルゴリズムの構築(Inoue et al., Cell 177, 1-15 (2019))を行なった。この解析から、多くのGPCR活性化に関わると想定されるアミノ酸位置や、特定のシグナルを伝達する上で重要と推測されるアミノ酸位置を抽出した。その結果、3.43Q以外にもGPCRを活性化、さらには、特定のシグナルのみを活性化しうる変異の候補が得られた。その候補変異を導入したDNAコンストラクトを作成し、HEK293細胞に発現させ、シグナルアッセイを行い、実際に特定のシグナルを高選択的に伝達する変異の同定に至っている。 さらに、前述の3.43Qが与えるGPCR活性化に与える影響を解析を行なった。特に既報の構造情報から、不活性化状態、活性化状態における構造変化から、相互作用するアミノ酸位置と性質に着目した。3.43Q変異に加え、着目した3箇所の変異をさらに加えることで、NTS1(ニューロテンシン受容体)やEP4(プロスタグランジンE2受容体)など、リガンド既知GPCRにおいて、より多くのGPCRに適用可能な、より強力に活性化を誘導可能な変異の同定に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は以下に挙げる、2つの項目に関して実施し成果を得た。 1. GPCR活性化を検出する実験系の構築 これまでの課題として、GPCRの活性化、特にリガンド非依存的な基礎活性を測定することは困難であり、このシグナルを厳密に測定する実験系をNanoBiTによるタンパク質間道後作用解析技術を用いて、Gタンパク質、βアレスチンシグナルを検出する実験系を構築した。本系の導入により、高精度、高感度にGPCRの活性を測定可能となった。 2.活性化変異が適用可能なGPCRの拡大と、活性化の増強 我々がこれまでに解析してきた多数のGPCRのシグナル解析の結果に加え、ClassAに属するGPCRの配列アライメント、既報のGPCR三次元構造の情報を組み合わせることで、GPCR活性化、Gタンパク質共役に関わるアミノ酸位置とアミノ酸の性質の網羅的同定と、活性化、Gタンパク質共役を予測する配列アルゴリズムの構築(Inoue et al., Cell 177, 1-15 (2019))を行なった。この解析から、3.43Q以外にもGPCRを活性化、さらには、特定のシグナルのみを活性化しうる変異の候補が得られた。その候補変異を導入したDNAコンストラクトを作成し、HEK293細胞に発現させ、シグナルアッセイを行い、実際に特定のシグナルを高選択的に伝達する変異の同定に至っている。 さらに、前述の3.43Qが与えるGPCR活性化に与える影響を解析を行なった。既報の構造情報から、不活性化状態、活性化状態における構造変化から、相互作用するアミノ酸位置と性質に着目した。3.43Q変異に加え、着目した3箇所の変異をさらに加えることで、NTS1(ニューロテンシン受容体)やEP4(プロスタグランジンE2受容体)など、リガンド既知GPCRにおいて、より多くのGPCRに適用可能な、より強力に活性化を誘導可能な変異の同定に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としていかに2点を挙げる。 1. GPCRの基礎活性を生じるメカニズムの解析 どのようなメカニズムで、GPCRのリガンド非依存的な基礎活性を生じるかについて2つの手法で解析する。1つ目の方策としてはこれまでに取得した基礎活性データと配列情報を組み合わせ、基礎活性の有無や強度を規定するアミノ酸の同定を目指す。また、2つ目の手法として、当初から予定していた活性化型GPCRの構造解析を試みる。これら解析から、アミノ酸の一次配列上での情報と、活性化GPCRの3次元情報を組み合わせ、基礎活性が生じる分子メカニズムに迫る。 2. リガンド未知GPCRの新規リガンド同定、リガンド既知GPCRの 当初から予定しているGPCRの新規リガンド同定に取り組む予定である。具体的には受容体未知の生理活性脂質候補を見出しており、このリガンド群とGPCRの組み合わせを、前年度構築したGPCR実験系によりスクリーニングしていく。 脂質リガンドのスクリーニングにおいては、スクリーニング時に高感度の実験であることが重要であり、前年度に進めたGPCR変異による高感度化、新規実験系の構築による高感度化の技術を組み合わせ、リガンド-GPCRの組み合わせ同定を試みる。
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